ヘンデルの軽妙さと味わい深さを抽出◆ドゥメッシュ アンセルメ スイス・ロマンド管 ヘンデル・オルガン協奏曲1番/2番

武者がえし

2019年11月04日 02:15

ストラヴィンスキーとは同時代を生きて親交を結び、20世紀の音楽史に偉大な足跡を残したスイスの大巨匠エルネスト・アンセルメの珍しいヘンデル。

 第二次世界大戦勃発直前の1941年頃に潜水艦ソナー開発の一翼を担い、その際に、潜水艦の音を聞き分ける目的として開発され、当時としては画期的な高音質録音方式であった。1945年には高域周波数特性を 12KHz まで伸ばした ffrr( Full Frequency Range Recording 、全周波数帯域録音)仕様の SP 盤を発売し、1950年6月には、ffrr 仕様の初の LP 盤を発売する。特に LP 時代には、この仕様の LP レコードの音質の素晴らしさは他の LP と比べて群を抜く程素晴らしく、当時のハイファイ・マニアやレコード・マニアに大いに喜ばれ、「英デッカ=ロンドンの ffrr レコードは音がいい」と定着させた。LP 第1回発売には、J.S. バッハ作曲「ブランデンブルク協奏曲第4&6番」(LXT-2501、12インチ盤)、同作曲「管弦楽組曲第3番」(LX-3001、10インチ盤)があった。演奏はいずれも、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団によるものである。

デッカ・サウンド最大の“マジック”

「ロマンド管の音を味わっていただくのには、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールで聴いてもらわなくてはなりません。」
 アンセルメが来日時のインタビューで語った、ダニエル・バートン設計の同ホールは低音が極端に抑えられ、高音は艶やかさと華やかさにあふれた独特の響きをもつために、ドイツ音楽には不向きだがフランス音楽には最適とされる。
 ここでは管楽器の独特の音色やニュアンス、とくに鼻にかかったような木管のイントネーションとラテン的で華麗なブラスの響きに特徴があり、今では失われてしまったフランスの古き良き香りが引き立つ。
 アンセルメの響きは英デッカの技術の恩恵で出来上がった。ストラヴィンスキーの3大バレエをはじめ、ファリャのバレエ音楽など彼らが世に紹介し広めてきた音楽の、その演奏が多くの人々に支持されたことによってアンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団は第一級の「売れる」オーケストラとなっていった。
 1968年の日本公演で「オーケストラが二流」、「名演奏はレコード録音のマジック」という風評が巻き起こり、このコンビの評価と人気は急落する事態を招くが、決して一流ではなかったスイス・ロマンド管弦楽団をヴィルトゥオーゾ・オーケストラように聴かせたデッカ・サウンド最大の“マジック”を、オーディオファイルは身を持って体感したという。

通販レコードのご案内

《英オレンジ金文字盤 ffrr》GB DECCA LXT2759 エルネスト・アンセルメ ヘンデル・オルガン協奏曲Op.4-1/Op.4-2 本盤はオルガンの音でオーケストラ全体を包みこむように録る“デッカ・ツリー”のマイク・セッティングによるもので、やわらかな金属和音がオーケストラにしっとりと溶け合う。個別にマイクを向けたオーケストラとオルガンの演奏を合成して仕上げた不自然な響きとは次元の異なる質の高いサウンドを堪能させてくれる。
 表面はサラッと流しているようだが、その実、細部まで神経のよく行き届いた表現で、ことに管楽器のバランスと、リズムの扱いの巧妙さという点では抜群だ。オルガンの明るい音色とスイス・ロマンド管弦楽団との息がぴったりと合っているのも、こころよい。残念なことにヴィクトリア・ホールは1980年代に火災に遭い、オルガンなどを消失してしまった。
1952年10月ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール録音。
■オレンジ・ラベル金文字、EQカーブ:old ffrr、モノラル録音。

 オルガンは世界的女流オルガン奏者のジャンヌ・ドゥメシュ( Jeanne Demessieux )。1921年2月13日フランスの南部、中世からの学園都市であるモンペリエに生まれる。1936年から1939年まで、マルセル・デュプレに個人的にオルガンを師事。作曲をアンリ・ビュッセルに師事。1946年にパリのサル・プレイエルでオルガニストとして初リサイタルを果たす。
 ドゥメシュは驚異的な記憶力の持ち主で、暗譜で弾けるレパートリーは優に2,500曲にものぼった。録音数も数多く、フランクのオルガン曲全集(1958年)は、1960年にディスク大賞に輝いている。
 もともと虚弱体質であったため、1960年代中ごろに健康上の不安から演奏活動を制限した。1967年にデッカ・レコードと契約して、オリヴィエ・メシアンのオルガン曲全集を録音することになったものの、病臥してから数ヵ月後の1968年11月11日にパリの住居で他界したため、この企画は実現を見なかった。しかし作曲は数多く、オルガン曲を軸に室内楽、歌曲に及ぶ。
 ヘンデルのオルガン協奏曲の2曲のカデンツァもドゥメシュが書いている。特に本盤を録音した1952年は充実している。ドゥメシュのオルガンは上品にヘンデルの軽妙さと味わい深さを抽出。アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団も端正にして優雅。作品の魅力を充分に伝えてくれる。

通販レコード詳細・コンディション、価格

レコード番号
LXT2759
作曲家
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
演奏者
ジャンヌ・ドゥメッシュー
オーケストラ
スイス・ロマンド管弦楽団
指揮者
エルネスト・アンセルメ
録音種別
MONO

ORANGE WITH GOLD LETTERING, MONO FLAT 1枚組 ( 200g ), Release 54.12, Stamper 1B/1A。


優秀録音、コレクションアイテム Decca ffrr 英国 DECCA ffrr 録音LP。 1958年頃までのプレスでオレンジ地に金文字。いわゆる「溝」はセンターホールのごく近くにあり、グルーブガードのないフラット盤です。総じてモノラル盤の音質はステレオ盤より中低音域が厚く、コシがあるので同じ演奏のステレオ盤より明らかに好ましいものも少なくありません。そして、こうしたモノラル盤はステレオ盤とは違ったマイク・セッティングで録音された音質が多く楽しめます。
 モノーラル盤はステレオ盤より力感があり、そこはブルーノートのモノラル盤と共通していますが奥行きでオーケストラの存在感を出している点で、わたしはオレンジラベル盤が好きです。
ジャケット状態
EX
レコード状態
EX
製盤国
GB(イギリス)盤
詳細の確認、購入手続きは品番のリンクから行えます。 


オーダーは
品番 / 34-18244


販売価格
3,500円(税別)


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レコードサウンド/カテゴリ指定

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