名曲名盤縁起◉「恋は愚かというけれど」が身に沁みる名旋律〜ヴォルフ=フェラーリ歌劇《マドンナの宝石》間奏曲

武者がえし

2019年01月12日 12:00

イタリア作曲家ヴォルフ=フェラーリ生まれる ― 1876年1月12日

 新春恒例のニューイヤー・コンサートで創立175年を迎えるウィーン・フィルは、その記念の演奏会の指揮者に「100年に1度の天才」と呼ばれる若干35歳の若い指揮者を選んだ。グスターヴォ・ドゥダメルがコンサートの一曲目に振った、レハールはニューイヤー・コンサート初登場。これが2017年最初に聞く音楽となった。他にスッペ、ワルトトイフェル、ニコライの曲が登場した。

 新年を迎えて、朝は氷点下の気温だったと言いますが、寝ていて寒かった。といった感じではなかったし熊本市内は最高気温8度から12度の温かい日中の日々が続いています。強い風が吹いているのは高い空の雲の動きが早いことで感じます。しかし、日陰でも襟を立てるくらいではありません。

 クラシック音楽で日本で良く好まれていると思われるのは『交響曲』、『管弦楽』。レコードでの流通のこれが大きく閉めています。次いでピアノ音楽、モーツァルトやショパン、ベートーヴェンと言ったところでしょうか。毎月行っているレコードコンサートでも、会場に来場された会員にリクエストを問うと、『来年のプログラムには、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲や、スッペの軽騎兵とかがあったら聴かせて欲しい』と『お願いしますばい』と乞われるほどです。
 スッペはウィーンのオペレッタの火付け役ですし、黄金期をつくりだしたのがレハール。ワルトトイフェルのスケーターズ・ワルツも、ウィンナ・ワルツとして一般的に認識の高いことでしょう。作曲家の名前やオペラのタイトルでは、その旋律は思い浮かびにくいでしょうが《マドンナの宝石》は、かつて《聖母の宝石》として、音楽を聞くと誰もがよく知っている好きな曲だと必ず答えてくれます。

 この日が誕生日のエルマーノ・ヴォルフ=フェラーリは、20世紀前半のイタリアで流行したヴェリズモ・オペラー市井で実際に起こった事件を題材にしたオペラーただ一作で、その名が現在まで残された。1911年に初演されて、それなりにヒットした《マドンナの宝石》だ。


女性に惚れ込んで身を滅ぼす男の話。

 カルメンに似た奔放な義理の妹を好きになった鍛冶屋の若者が、彼女の歓心を買うためにマドンナの宝石を盗んだはいいが、女は心変わり。罪を悔やんで海に身を投げるという悲劇である。今日、このオペラはほとんど上演されないが、2つある間奏曲のうちの、第2幕の前に演奏される甘く美しい感傷的な第1番だけが、「マドンナの宝石」として今も親しまれている。宝石に目がくらむ女、恋に狂って犯罪に手を染める男。恋のもつれは、音楽にとっても永遠のテーマである。
鑑賞のおすすめ盤は。 第一に、ネルロ・サンティ盤を聴きたい。ネルロ・サンティは1931年イタリア、ロヴィーコ生まれ。パドヴァ音楽院で学美、51年「リゴレット」でデビュー。55年マントヴァの指揮者コンクールに入賞した。58年からミラノ・スカラ座をはじめ、各地で活躍。59年にはチューリッヒ歌劇場で大成功を収め、以降同歌劇場のイタリア・オペラ最高責任者として夥しい数の演目を指揮。62年には「仮面舞踏会」を携え、メトロポリタン・オペラにデビュー。絶賛を博し、ここでも常連として意欲的活動を繰り広げている。
 そのほかヴェローナ野外オペラ、ローマ歌劇場に常時出演。93年以来、読売日本交響楽団で演奏会形式のオペラを定期的に指揮している。名実ともにイタリア・オペラ最高の巨匠で、伝統を重視する一方、若手中堅の登用にも積極性を見せる。そうした若手の育成に役立っているのが、オーケストラ・トレーナーとしての秀抜な手腕を発揮させるべくオーケストラのすべての楽器を自ら演奏できる。リハーサル風景では各楽器からの相談にテキパキと見本を示して聞かせるほど、どの楽器もかなりレベルが高い。ソプラノ歌手のアドリアーナ・マルフィージはサンティの実娘であり、NHK交響楽団定期公演でしばしば共演している。主要レパートリーは、ドニゼッティ、ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニ、ワーグナーなど。イタリア・オペラの知られざる作曲家の序曲集は随一。
GB DECCA SXL2177 ネルロ・サンティ MUSIC OF WOLF-FERRARI
 カラヤンは、歌劇《マドンナの宝石》から、この第2幕の前に演奏される間奏曲第1番ではなく、もう一つの間奏曲を録音しているのは面白い。

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