2020年02月23日 01:30
LIVING STEREO SHADED DOG、1S/1S最初期スタンパー。1956年9月「指輪セッション」で高名なウィーン・ゾフィエンザールでデッカ・チームのジョン・カルーショー/ジェームス・ブラウンが担当したライナー&ウィーン・フィルの名盤の初版。ウィーン・フィルとの集中度の高いこの名演奏は、カルショウのプロデュースにより、ステレオ黎明期録音とは信じ難い見事な第一級のオーディオファイル盤に仕上がっています。
この〝大家のゆとり〟に敏感に感応している名門オーケストラの献身。録音時、フリッツ・ライナーは米RCAの専属であり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は英デッカと専属契約を結んでいた。ライナー指揮ウィーン・フィルの組合せは珍しく、専属契約の制約が厳しかった1950、60年代はデッカとRCAが北米に販路を持っていたことで提携関係にあったからこそ実現した夢のプロジェクトで、ゲオルグ・ショルティの出世作となったワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」を手掛けたプロデューサーのジョン・カルショウと、エンジニアのゴードン・パリーの名物コンビが携わっています。録音会場もその「ニーベルングの指環」と同じウィーンのゾフィエンザールで行われた。英デッカに残したLP4枚分の録音のうちの、本盤は1956年9月録音の2曲の交響詩です。両曲を作曲したリヒャルト・シュトラウスと縁のある、名門ウィーン・フィルを、一世を風靡した名指揮者ライナーが指揮した。だけでなく、そのメリハリのある指揮ぶりに、自発性に溢れた音楽性をもつオーケストラが、敏感に感じ取っているのが伝わってくる贅沢極まりない録音です。
シカゴ交響楽団に黄金時代をもたらしたライナーとリヒャルト・シュトラウスの録音史上における結びつきにも定評があります。ピッツバーグ交響楽団音楽監督時代にすでに4つのオーケストラ作品 ― 交響詩『ドン・ファン(1941年1月9日)』『ドン・キホーテ(1941年11月15日、チェロ独奏は、グレゴール・ピアティゴルスキー)』『英雄の生涯(1947年11月10日)』、組曲『町人貴族(1946年2月4日)』をCOLUMBIAにSP録音していますし、1953年にシカゴ響の音楽監督に就任し、1954年3月6日と8日、RCAへの最初の録音に選んだのも交響詩『英雄の生涯』と『ツァラトゥストラはかく語りき』でした。かつてライナーがドレスデン宮廷歌劇場の指揮者を務めていた時期(1914〜1921)にはすでに交流があり、『影のない女』のドイツ初演をはじめ、『エレクトラ』『サロメ』『ばらの騎士』といったリヒャルト・シュトラウスの主要オペラを積極的に紹介していました。また1949年からのメトロポリタン歌劇場時代の幕開けを飾ったのが『サロメ』であり、このセンセーションナルな上演と成功こそが、アメリカにおけるライナーの名声を確固たるものとし、シカゴ響の音楽監督就任への道を作ったとも言われています。以後、ライナーは米RCAにシカゴ響との多くの名録音を残しましたが、それ以外のオーケストラとの録音を英デッカにも残しました。ただし、ハンガリー出身のライナーの厳格な造型性は、恣意的な崩れを許さない。ライナーはオーケストラを思うがままに引っ張ってゆく豪腕で知られた指揮者であったが、ウィーン・フィルでも情感と引き締まった指揮ぶりを見せた演奏。リズム感溢れた颯爽とした指揮なのだが、同時に全体がゆったりとした豊かな情感に包まれた演奏であることに気付かされる。手兵シカゴ響同様ライナーの厳格な統制の下、隅々にまで行き届いた緊張感があり、指揮者特有の美学に貫かれた名演が展開されています。
ウィーン・フィルとはこの時に4週間をかけたヴェルディの「レクイエム」も録音したが、帰国後。心臓病の発作をおこして入院、すべてのコンサートをキャンセルして療養を余儀なくされた。病状に自覚があったのかは知らないが、予感のようなものはあったのではないだろうか。余りにも厳しい要求をするためにシカゴ響の楽団員たちに嫌われていたライナーと、並みいる指揮者達に対しても「我々の音楽を邪魔しないでくれ」と楯突くことも厭わなかったウィーン・フィルの楽団員たちとの競演。両者〝十八番〟と〝我等の〟リヒャルト・シュトラウスだけに、現代ではとても味わえないような名人芸のルバートが披露される。古き良き時代の演奏だと侮らずに聞いて欲しい。ツボにはまってしまうと、彼等の演奏でなければ満足出来ない境地に陥ること間違いなし。
Recorded 4 - 7 September 1956 in the Sofiensaal, Vienna. Engineer [Uncredited] – James Brown, Producer [Uncredited] – John Culshaw
入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。