シリアス★最後のオペラ カペッキ ゼーフリート テッパー フリッチャイ指揮ベルリン放送響◆モーツァルト・フィガロの結婚
ヴィンテージレコードの極み闘病後の精神的深みを増した魅力。喜劇がシリアスを極めている。
《独チューリップ盤》DE DGG SLPM138 697/99 フリッチャイ モーツァルト「フィガロの結婚」
フリッチャイは1957年に白血病になり、胃と腸の大手術を受けるなどして1年間療養したうえで現場復帰していますが病状の悪化により、1961年12月に指揮活動を中断し治療に専念するものの、1963年2月に48歳の若さで亡くなっています。そのため、フリッチャイの遺した録音は白血病前と後で大きく芸風が異なっているのが特徴で、エネルギッシュでシャープだった健康なときの演奏に対し、白血病発症以降は、まだ若いのに晩年のような雰囲気さえ漂う独特なものとなり、その陰影を大切にしたスタイルには深い魅力が備わっていることが多かったようです。
この「フィガロの結婚」は、白血病発症後の録音ですが、治療が功を奏して健康状態が良好だった時期にステレオ方式でセッション録音されたもので、モーツァルトらしい軽やかさとしなやかさ、弾むリズムは維持しながらも、細部まで見通せるよう声部バランスを整えた上で示される透明感と旋律美には実に見事なものがありました。1960年9月ベルリン、イエス・キリスト教会での録音。
イエス・キリスト教会はカラヤンやベームなどがベルリン・フィルと1970年代半ばまで頻繁に録音で使った場所で有名。その教会が醸しだす豊かな響きが美しい。オーケストラと歌手が一体となった気品に溢れた演奏が本当に素晴らしい。優秀録音、名演、名盤。
クレジット・アンド・ノート
プロダクト
- レコード番号
- SLPM138 697/99
- 作曲家
- ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
- 演奏者
- ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ マリア・シュターダー イルムガルト・ゼーフリート レナート・カペッキ ヘルタ・テッパー リリアン・ベニングセン ポール・キュン フリードリヒ・レンツ イヴァン・シャルディ ゲオルク・ヴィーター ローズル・シュヴァイガー
- オーケストラ
- ベルリン放送交響楽団 RIAS室内合唱団
- 指揮者
- フェレンツ・フリッチャイ
- 録音種別
- STEREO
- 製盤国
- DE(ドイツ)盤
解説書付属。
TULIP MADE IN GERMANY, STEREO 3枚組160g重量盤。
フリッチャイ最後のオペラ録音。フェレンツ・フリッチャイ(1914〜1963)は古典派から現代作品まで幅広いレパートリーの持ち主でしたが、特にバルトークとモーツァルトに関しては自ら本も書くなど情熱的に取り組んでおり、世評にも高いものがありました。この『フィガロの結婚』もかつて名盤として知られたものでした。歌手陣もレナート・カペッキ(フィガロ)、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(アルマヴィーヴァ伯爵)、マリア・シュターダー(伯爵夫人)、イルムガルト・ゼーフリート(スザンナ)、ヘルタ・テッパー(ケルビーノ)、イヴァン・サルディ(バルトロ)、リリアン・ベニングセン(マルチェリーナ)、パウル・クーエン(バジリオ)、とフリッチャイとお馴染みの有名どころが顔を揃えており、フリッチャイの描く『フィガロの結婚』をシリアスに描き出しています。
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