2023年04月25日 08:15
その凄さが、これみよがしになっていないのが心憎い。歌うようなヴァイオリンの音色という形容は、これこそ肉声の歌声を聴いているようなカンポーリの録音にこそ言える至福の一枚。
そしてまた、楽譜に書かれた音符から読み取った共感に忠実に、楽器が放つ音に色彩や音量の変化を綿密に施していくカンポーリの音楽性は、トルソーの少女像が甘美な官能的なものに変化していく様な艶めかしさも感じられて脱帽もの。
類まれな技巧を駆使して豊かな情感が表現されるが、その情感にはあくまで上品で繊細な響きの持ち主、アルフレツド・カンポーリ。名前からして純粋なイタリア人と思えるが、活躍の場は女王陛下の国英国。バッハもモーツァルトもベートーヴェンもイタリアのやり方を見習い、その手法で自分の音楽を書きましたが、カンポーリは祖国イタリアを、異国の地、英国で DECCA の力を借り、国際スタンダードにした立役者と云ったところか。
カンポーリのヴァイオリンは官能的なまでに甘美でありながら、ぴんと張りつめるような緊張感を保って伸びやかに歌っている。イタリア人という彼の中のラテン的な明るさとストラディヴァリスの豊穣な音色が相まって、 ゆっくりとした時間の流れに身を委ねることが出来ます。
ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、シベリウス、ブルッフなどと有名コンチェルト七大としたい。この曲は曲への深い共感と、自然な息づかいで精神的な余裕が感じられる演奏である必要がある。そこが課題だが、平然と演奏できるようになるには、作曲の背景にある《とある人類が引き起こした悲しい歴史》の生々しい記憶が遠いものと成ってからのことかもしれないが。
表情豊かに歌い上げるアルフレード・カンポーリのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は余人に真似のできない唯一無二の演奏表現。甘さと優雅さに浸れるカンポーリ節を堪能できる1枚です。英国デッカSXL2026の初期盤は10万円オーバーの超プレミアとなっており、LONDONレーベル・英デッカプレス初版の当盤も高額ではありますが、お買い得と言えます。
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