2023年09月14日 02:59
気がつけば半世紀ずっと君臨しているのは、流行や風潮に流されやすい世の中でガッツリ伝えたいことだけを強調した演奏だからでしょう。プレートル(92歳)自らも「私は単なる指揮者ではなく解釈者である」と述べていることから伝統的な演奏形式を踏襲しない解釈に関しては評価の分かれるところである。しかし、2016年時点でスクロヴァチェフスキ(92歳)やマリナー(92歳)と共に1920年代に生まれた最高齢現役指揮者の一人であり、その高い独創性と華やかな創造力による比肩のない演奏は一聴に値する。惜しくも2017年1月4日に没、享年92歳で最高齢現役指揮者の記録更新は叶いませんでした。
かねてから手がけていたリヒャルト・シュトラウスのオペラに加え、様々なドイツ音楽との関わりを深め、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの交響曲を中心に構成されたツィクルスでも伝統的な演奏形式を踏襲しない型破りの解釈だったことでも言える。
プレートルの知名度を挙げるひとつの契機となったマリア・カラスとの共演は、1961年に行われた『パリのマリア・カラス』の録音で、カラス本人がプレートルをお気に入りの指揮者として指名したことに始まる。カラスは歌手としてすでに下り坂にあり、実際にはコンサートツアーにおける13回の共演と18回のオペラでの共演記録しか残っていない。録音としても正式なスタジオ録音としては、ビゼーの『カルメン』全曲と、カラスにとって2回目のスタジオ録音であるプッチーニの『トスカ』全曲、フランス・オペラ・アリア集『パリのマリア・カラス』の3録音しか残されていない。
マリア・カラスの表現は、ビブラートもちょっと耳につく感じもあり、とにかくアクは強いです。1964年、マリア・カラスが40歳の時のセッション録音。スカラ座盤に較べると声の威力は減退していて、技術的には完ぺきではないんですけど、音楽が生きていると言うんですかね。それを補ってあまりあるドラマティックな表現力はやはり魅力的です。なんと言ってもプレートル指揮パリ国立歌劇場管弦楽団の音色にラテン的な明晰さがあふれているのがいいですね。ジョルジュ・プレートルも当時40歳、ダイナミックな音作りでカラスを引き立てています。しかも軽妙なリズムで覇気があります。非常に快活で生き生きしてるのです。旋律ものびのびと歌ってます。ホルンの軽い音色にかかるヴィブラート、これがまたフランス的で粋ですね。なかなかこの生命力はいいですね。
生命感と強い説得力がある録音が気がつけば半生記経過しようとしている。
この録音が今日まで色褪せないのは、カラスの魅力の全てを表出した強烈な歌唱とカラスの生涯が重なっているからではと思います。1964年7月パリのサロワグラムでのセッション、声の調子やその気迫と歌心は全盛期を過ぎていますが素晴らしい。かつてのカラスのソプラノよりも少し重い声質で、メゾのような響きを持っています。
本盤を聴き直す度に、カラスは紛れもない不世出のソプラノだったのが良くわかる名盤です。
東芝音楽工業製金ラベル, STEREO 3枚組(170g), 英EMI同一輸入スタンパー YLX 使用盤。初版特典カラス写真集18べージ添付、解説書も45ページに及ぶ豪華版。
入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。