美学☆カラヤン プッチーニ:ラ・ボエーム

武者がえし

2013年06月09日 12:00



Puccini: La Boheme
Freni, Harwood, Pavarotti, Panerai, Maffeo, Ghiaurov, Herbert Von Karajan / Berlin Philharmonic Orchestra


スーパースターたちの全盛期の魅力


パリの庶民の生活を活き活きと描き出している。安アパートに住んでいる美大生と洋裁店で働いている少女の出会いと、ささやかな愛のストーリー。出会いのきっかけは、美大生がピザ配達のアルバイトをしていて、でも、間違って届いた宅配便を少女が届けに来てでも・・・どんな国なのかも知らない王様や女王様の話でも、神話の物語でもないから親しみやすい。
カラヤンがオペラ演奏に習熟したウィーン・フィルを使わないで、ベルリン・フィルを起用して成功したのはオーケストラも気持ちを重ね安かったからだろう。ウィーン・フィルよりも良かったんじゃないかと思えるのが、ミミとロドルフォの出会いの二重唱。ふたりの甘く柔らかな声は見事に溶けあい、ボヘミアンたちの魂を完璧に作り上げていた。
若い二人を優しく包み込むような音楽。カラヤン特有のオペラ演奏のアプローチだけど、ベルリン・フィルの繊細な弦楽器群のピアニシモの効果は素晴らしいです。
先ごろ亡くなったパヴァロッティの「おはこ」。でも、歌ったのはこの時が初めてだったとか。ベルリン・フィルのオペラ録音も初めてだったのも嘘のように、とにかく最初の1小節からドラマティックな演奏に驚かされる。それはグランド・オペラより、大パノラマのスクリーンにドーンとテーマ音楽が轟くようではあるけれど。ミミはフレーニ一番のはまり役であり、パヴァロッティの歌唱は伸びと艶があり、それにカラヤンとベルリンフィルが一番良い関係の時期というこれ以上望むべくもない好条件が揃ったのだからこれが世紀の名盤でないはずはないのである。
録音セッション場所が、ベルリン・フィルハーモニーではなくイエス・キリスト教会だったのも良かったのだと評価されている。デッカ・スタジオでもセッションされているが、どういうものだったかはわからない。歌とオーケストラにズレが感じられるところはあるし、編集ミスかと思ってしまいそうな音楽の流れがフッと消えるところがある。オーバー・ダビングや、再録音の選択肢もあっただろう。しかし去年制作された『カラヤン・ドキュメンタリー』で、カラヤンは音楽の流れの方をとった。
エンジニアから楽器の演奏ミスを指摘されても、そのままにしているところがカラヤンの録音を多く聴いていると良く出会う。一般的イメージは、翻弄されている人たちが神話を上塗りしていくものなのです。TAS推薦盤。



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ノート


曲目:
ラ・ボエーム
作曲:
プッチーニ

演奏


ソプラノ:
ミレッラ・フレーニ
テノール:
ルチアーノ・パヴァロッティ
バス:
ニコライ・ギャウロフ
バリトン:
ロランド・パネライ
ソプラノ:
エリザベス・ハーウッド
バリトン:
ジャンニ・マッフォ
テノール:
ミシェル・セネシャル
合唱:
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団、シェーネベルク少年合唱団
指揮:
ヘルベルト・フォン・カラヤン
オーケストラ:
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

プロダクト


レーベル:
英 DECCA
レコード番号:
SET 565/66
初版:
ナロー・バンド、ED4ラベル。
録音種別
ステレオ
録音年
1972年10月、1973年3月22日、ベルリン、イエス・キリスト教会。
プロデューサー:
レイ・ミンシャル、ジェイムズ・マリンソン
エンジニア:
ゴードン・パリー、コリン・ムアフット
フォーマット
2LP

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