作曲者生前に出版されなかった作品群◉コレルリの音楽(2)〜古楽の楽しみ

武者がえし

2015年02月24日 18:20

アルカンジェロ・コレッリは、同時代そして次代のバッハ、ヘンデルにとてつもない影響力を及ぼした音楽史上重要な作曲家ですが、日本ではどうにも他のバロック有名作曲家らの影に隠れがちです。今週の『古楽の楽しみ』の選曲を見ると、ムジカ・アンフィオンのブリリアント・クラシック盤が度々使用されていますが『コレルリ全集』といってもCDで、わずか10枚でしか無いのです。
バロック音楽時代の作曲家の全集って、宗教曲やら声楽曲は聞いてもわからないからぁ、という声もある中で『コレルリ全集』には一切の歌の曲がありません。宗教的なものとして『クリスマス協奏曲』が有りますが、今日のクリスマス・パーティで利用できるような音楽じゃない。何故だ。
作曲家としてはバッハ、ヘンデルに影響をもたらしたもののコレルリ自身は演奏家としての音楽家人生だったのです。

コレッリの作品の特徴を簡単に表せば、“調和と洗練”となるでしょうか。どの作品もとてつもなく厳しい審美眼を持っていたコレッリによって推敲され選ばれた、一部の隙もないものばかりです。
余計なものが一切削ぎ落されたコレッリの作品は洗練の極致とも言えるほどシンプルなものです。それを楽譜通り弾くだけでは、コレッリが意図した音楽を再現することは不可能なのです。
コレッリ演奏には、即興的装飾という演奏技術が欠かせないものとなっています。コレッリの骨格に正確に肉付けしていくことなくしてはコレッリの作品は真の輝きを発しないのです。

第2回での聞き所は『作曲者生前に出版されなかった作品群』、特にトリオ・ソナタ集作品3とヴァイオリン・ソナタ集作品5 (いずれも ARCANA ) の全曲録音は完璧さにおいて比類なく、もしコレッリが聴いたら絶賛するだろうと思えるほどの素晴らしさです。エンリーコ・ガッティは活動初期からコレッリ作品を積極的に取り上げ、その重要性を訴える如く現在までいくつかのコレッリ・アルバムを世に出しています。
ガッティがバロック・ヴァイオリンの神様”だから、演奏家としてコレルリに魅了されているのでしょう。これらの録音では、様々な研究資料を参照し、演奏経験で培った17世紀の作品における様式研究を基に、コレッリが作品を作曲したその当時の演奏再現が試みられています。
ガッティのセンスと経験から生み出される装飾法はかなり大胆なものなのですが、まるでコレッリの作品がそれを望んでいるように為されているため、とても自然に響きます。


「トリオ・ソナタ ニ長調 作品3 第2」 コレルリ作曲(8分07秒)
(合奏)アンサンブル・アウロラ
<ARCANA MER-A402>


「トリオ・ソナタ ヘ長調 作品3 第1」 コレルリ作曲(6分45秒)
「トリオ・ソナタ ホ短調 作品3 第7」 コレルリ作曲(6分27秒)
(合奏)ムジカ・アンフィオン
<BRILLIANTCLASSICS 92118>

「トリオ・ソナタ ホ長調 作品4 第6」 コレルリ作曲(6分38秒)
「トリオ・ソナタ 変ロ長調 作品4 第9」 コレルリ作曲(8分28秒)
「トリオ・ソナタ イ長調 作品4 第3」 コレルリ作曲(9分23秒)
(合奏)アンサンブル・アウロラ
<GLOSSA GCD 921207>
関連記事