忘れがたい誘惑との出会い 幽玄の味わいを奏でるバロック・ヴァイオリン◉コレルリの音楽(3)〜古楽の楽しみ

武者がえし

2015年02月25日 00:00

アルカンジェロ・コレッリ(1653-1713)、僕は正直この人のことを知らなかった。バロックといえばバッハとヘンデルとヴィヴァルディぐらいの知識しかなかったのである。それがある演奏会で〈ラ・フォリア〉を聴き、いっぺんに魅了されてしまった。

幽玄の味わいを奏でるバロック・ヴァイオリン


ヴァイオリン一艇だけで演奏された音楽が忘れられなくて。そういう相談の場合、ラ・フォリアを聴かせてみると、そうですそうです、この曲です。
嬉しそうに笑顔がかえってくる。どうして、すぐに分かるんですかぁ。
演奏時間はどのくらいの曲ですか。5分以上はあったのですが、それがとても短く感じたんです。
曲想は単純で繰り返し繰り返し同じなのですが、それが飽きないのです。

絞り込んで尋ねれば尚の事。
バロック・ヴァイオリンで奏でられたのを聞いたら、もう一発で虜だろう。

多くのバロック・ヴァイオリンの演奏が好きだと答える愛好家の体験は同じスタートではないかと思います。それは、わたしも同様だから。だからこそ、これかなって音楽が脳裏に浮かびます。
わたしがこの《ラ・フォリア》に一殺にされたのは、バロック時代の演奏を集めたコンピレーションアルバムの中での出会いだった。
以来、コレルリの名前は頭の片隅に常に有る。ただ、一般的に目にとまる機会が少ないのが惜しい。


「バイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ長調 作品5 第3」コレルリ作曲(11分13秒)
(バイオリン)レミー・ボーデ
(チェロ)ヤープ・テル・リンデン
(チェンバロ)ピーテル・ヤン・ベルデル
<BRILLIANT CLASSICS 92118>

「バイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 作品5 第6」コレルリ作曲(10分50秒)
「バイオリンと通奏低音のためのソナタ イ長調 作品5 第9」コレルリ作曲(11分54秒)
(バイオリン)桐山建志
(チェンバロ)大塚直哉
<ALM RECORDS ALCD-1135、1136>
バロック音楽の代表的作品として広く愛される《ラ・フォリア》を含むコレッリの「ヴァイオリン・ソナタ集 作品5」の全曲盤(2枚組)。1700年にローマで出版され、18世紀末までにおよそ40の版を重ねるなど、ヨーロッパ全土で広く演奏されてきた12のヴァイオリン・ソナタは、17世紀を通じて発展したイタリア・ヴァイオリン音楽の集大成的な作品であり、18世紀の美と気品のスタンダードともなった。古楽界で長年デュオとして活躍してきた「大江戸バロック」こと桐山建志と大塚直哉は、その巧みな技巧と洗練された音楽性によって生気あふれる作品の魅力を浮かび上がらせる。作曲家没後300年の今年こそ聴きたい、元禄時代に生まれたヨーロッパ音楽の必聴盤。
〈録音〉相模湖交流センター 2012年8月28-31日
total playing time ... [DISC 1...63’50”] [DISC 2...61’26”]
レコード芸術特選盤(2013年5月号)


「バイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ短調 作品5 第12“フォリア”」コレルリ作曲(11分05秒)
(バイオリン)寺神戸亮
(チェロ)ルシア・スヴァルツ
(チェンバロ)シーベ・ヘンストラ
<日本コロムビア COCO-78820>

ニュアンス豊かなバロック・ヴァイオリンの尽きせぬ魅力ヨーロッパ有数の古楽オーケストラのコンサート・マスターを歴任し、現在はラ・プティット・バンドのコンマスを務めながら、ソリストとしてまた指揮者としての意欲的な活動を続けている寺神戸亮の名盤。寺神戸の豊かなニュアンス、生気あふれる音楽作りは古楽演奏にありがちな無色透明な演奏とは一線を画すものであり、コレッリの音楽の魅力を再認識させてくれるはずです。

寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン)、シーベ・ヘンストラ(チェンバロ、オルガン)、ルシア・スヴァルツ(バロック・チェロ)
[録音:1994年8月、デン・ハーグ、旧カトリック教会]

レコード・アカデミー賞
※高音質「ブルースペックCD」仕様

COCO-78820 コレッリ:ヴァイオリンソナタ第7番・第8番・第9番・第10番・第11番・第12番 は廃盤。
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