伝説のホールで生まれた名演奏。盤質も良し●アンセルメ指揮スイス・ロマンド管 ムソルグスキー:展覧会の絵、ほか2曲

武者がえし

2015年05月30日 17:45

精緻なラヴェルのオーケストレーションに魅惑させる、イマジネーティヴな演奏ではないステレオLP時代の定番「展覧会の絵」。

アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団の演奏で、Side-A はムソルグスキーの《展覧会の絵》と Side-B 後半のプロコフィエフの《3つのオレンジへの恋》。
Side-B 前半がエイドリアン・ボールト指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏でプロコフィエフ作曲の《キージェ中尉》の組み合わせです。

数多いアンセルメの録音の中でも殊更評価が高く、ステレオLP時代を通じて《展覧会の絵》の代表盤とされていた歴史的名盤です。
録音魔だったアンセルメは、カラヤンと同様、録音技術の進歩に合わせて得意曲の再録音を積極的に行ないましたが、この「展覧会の絵」はその中でも極端な例で、1947年のロンドン響とのSP録音に始まり、スイス・ロマンド管とは1953年(モノラル)、1958年(ステレオ)、そしてこの1959年録音と12年間の間に4回も録音を重ねています。
モノラル時代に一世を風靡したトスカニーニ盤などの熱血アプローチとは異なり、むしろ客観的な視点でラヴェルの精緻なオーケストレーションの妙を克明に描き出す冷静さに耳がひきつけられます。

アンセルメは音楽の流れを誇張せずに、むしろなめらかに展開する指揮者で、リズム感はあくまでも鋭いが、音楽の運び方が実にうまい人である。フレーズがブツッ、ブツッと切れることがない。アンセルメは作品を劇的に解釈せず、むしろクールな眼で見つめる。《展覧会の絵》でのアンセルメのテンポは遅めだが、それが絵画のシチュエーションを浮かび上がらせ、イマジネーティヴな演奏ではないが、それがかえってラヴェルの精緻なオーケストレーションを再現するのに効果となり、その知的な解釈と豊かな人間性が結びついたところに独特の雰囲気を持った演奏が生まれている。

アナログレコードのスタンパーの数字とアルファベットの見方についてですが、1A, 2A, 3A … とプレスマスターのナンバリングに成るのではなく、DECCA では録音エンジニア自身がマスターのカッティングも責任をもってましたので、エンジニアの頭文字がスタンパーのアルファベットで識別できます。このケネス・ウィルキンスの担当したレコードのスタンパーのアルファベットは W となっています。




品番
34-18395

販売価格3,500 円

商品名GB DEC SPA229 アンセルメ&ボールト ムソルグスキー・展覧会の絵/プロコフィエフ・キージェ中尉/3つのオレンジへの恋
レコード番号
SPA229


作曲家
モデスト・ムソルグスキー、セルゲイ・プロコフィエフ
指揮者エルネスト・アンセルメ、エイドリアン・ボールトオーケストラスイス・ロマンド管弦楽団、パリ音楽院管弦楽団

録音種別
STEREO


ジャケット状態
EX


レコード状態
M-


製盤国
GB(イギリス)盤


カルテ(管弦楽曲)
BLUE WITH SILVER LETTERING、STEREO (150g)、Release 1960/1972、Stamper 1W/1W



ヴィンテージ盤が初めてという人にも試しやすい価格帯で、それでいてスタンパーは SXL オリジナルと同じアイテムも有る SPA シリーズは、これからアナログLPレコードを聴こうかと思うのにマストな狙い目。

DECCA 社の廉価版シリーズは、1960年前後に第1の廉価盤シリーズ「 Ace of Clubs/Ace of Diamond 」を発売します。その後、1970年代に入ると第2の廉価盤シリーズ「 Eclipse 」を発売します。そして、第3の廉価盤シリーズとして「 The World of Great Classics 」として「 SPA シリーズ」を発売します。

本盤は、その第3の「 SPA シリーズ」で発売されたレコード。
このシリーズのラインナップはクラシック入門編といった趣で演奏者の全然違う録音を組み合わせた編集盤も多く、コレクション的には無価値ですが、例えばアンセルメの「悲愴」のリアルステレオは英国盤ではこのレーベルだけですし、同じくアンセルメのブラームスやシベリウスなどの珍しい録音もオリジナルに近い金属原盤を用いており、SXL シリーズよりは比較して音質的にも僅かスッキリした感はありますが、一般的に印象としてある DECCA 社らしい高音質 ( HiFi ) となっています。SXLシリーズの初期盤を聴いていない人は、これが DECCA だ、と感じるだろうし聞き慣れた人も独特の味わいで耳あたりが良くて、これはこれで好きだという人も居る。

時期的に真空管アンプからトランジスタにカッティングは切り替わっていた頃で、盤の材質も純度と安定性が上がっているのでアナログの再生では扱いやすいレコードです。
同じソースでも、SXL オリジナルの 1/5 ~ 1/10 程度の費用で入手できるので、コストパフォーマンスの高い盤としてオススメできます。
また、今回のコレクションは、盤質が良好な盤が多いことも付け加えておきます。

(1) recorddate:1959年1月(展覧会の絵)、1957年(キージェ中尉)、1961年2月、3月(3つのオレンジへの恋)
(2) recordsession:アンセルメ:ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
(3) p&e:
(4) addition:優秀録音、名演

伝説のホールで幾多の名録音が生み出された

ジュネーヴのヴィクトリア・ホールは優れた音響を誇るうえに、レコーディング・スタジオとしても最適でした。指揮台の頭上に吊るしたデッカツリーといわれる3本のマイクロフォンのみで収録されたにもかかわらず、圧倒的な色彩感と空間性が再現されています。

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