きらクラDON 第134回の回答は、ヴァイオリン協奏曲から第3楽章だ。

武者がえし

2015年06月02日 01:45

ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77から第3楽章の冒頭

Johaness Brahms/Violin Concerto in D major
「詩情が欠けているのに、異常なほどに深遠さを装ってみせる」とチャイコフスキーが酷評しているのは有名な話。同年にチャイコフスキーは、かの「ヴァイオリン協奏曲」を作曲している。1877年9月にバーデン=バーデンでブルッフのヴァイオリン協奏曲第2番をサラサーテが演奏するのを聴いた時が作曲動機であるとされている。しかしブラームスはヨアヒムが弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に感銘を受けており、それがヴァイオリン協奏曲作曲動機でもある。その通り、構成、各主題の性格などベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の影響が強い。またそして、この作品を聴いたシベリウスは、その交響的な響きに衝撃を受け、自作のヴァイオリン協奏曲を全面的に改訂するきっかけとなった。
同時代のブルッフ、チャイコフスキーの影響。全時代のベートーヴェンを次世代のシベリウスに引き継がせたことで西欧のヴァイオリン協奏曲の要にブラームスのヴァイオリン協奏曲は存在価値を得ていると言えそうだ。

ベートーヴェン、メンデルスゾーンとともに「3大ヴァイオリン協奏曲」といわれる名曲。しかしヴァイオリニストが最も体力を消耗する曲でもあります。それはバックのオーケストラの楽譜がブラームス特有の交響楽的な緻密さでできているために、ソロのヴァイオリンの音量がバックのオーケストラに負けてしまうことがあるからです。それにもかかわらず、この曲はブラームスらしい曲想の雄大さと繊細さとを兼ね備えた傑作として、音楽史上燦然と輝いているのです。

第3楽章はジプシー風の力強い主題で、独奏、トゥッティと何度か繰り返される。第1主題はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番に似た3度の重音奏法の熱狂的な主題で、この楽章の重要なモチーフである。…と、この辺りが番組としての引っ掛けか。
今回のニアピンも楽しみだ。
えっ、短いと出題を聞いて思った。1秒、あったかしら。しかし、短い中にオーケストラから浮き立つソロヴァイオリンの音があった。
先週、第133回の「ブルックナー」が交響曲第7番の第3楽章だったこと。ニアピンだった「バッハ」チェンバロ協奏曲第1番で「チェンバロの音は聞こえたかしら」というのが答えへのヒントを導いてくれた。

ブラームスは幼時からピアノよりも先にヴァイオリンとチェロを学び、その奏法をよく理解してはいたが、最初の、そして唯一のヴァイオリン協奏曲を書き上げたのは45歳になってからだった。これは、交響曲第2番の翌年という、彼の創作活動が頂点に達した時期にあたり、交響的な重厚な響き、入念な主題操作、独奏楽器を突出させないバランス感覚、いずれもブラームスの個性が存分に表現された名作となった。そうした本作だけに、第1楽章が出題されていれば即座に曲目を導けずに、チャイコフスキーの批判を借りなくとも曖昧模糊禿あいまいもことしていただろう。
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