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2020年02月17日

名曲名盤縁起 不滅のマーラー指揮者がうたう“青春の憂鬱”◉マーラー〜《大地の歌》より「青春について」

温厚で、温和な指揮者

US COLUMBIA MS6426 ブルーノ・ワルター マーラー・大地の歌 温厚な男らしさでオーケストラを束ねたのはブルーノ・ワルター唯一だ。クラシック音楽を聴きはじめた人の前に、モーツァルトやベートーヴェンの作品の指揮者としてブルーノ・ワルターの名前を覚えることになる。そして、勧められる名盤とされるレコード、CDのライナーノーツやレビューに書かれている「温厚な人柄」「モラリスト」といった人物評により、大指揮者には稀な人格者のイメージを植え付けられる。
 しかし温厚とは女々しいことではない。トスカニーニやフルトヴェングラーと並ぶ、戦前、戦中、戦後を通して活躍して音楽好きを魅了した3大指揮者だが、ブルーノ・ワルターだけは激をオーケストラに飛ばすことはなかった。尤も、1930年代の名録音はワルターが60歳前後であり、戦後のコロンビア交響楽団と一連の録音を行ったときは80歳になっていた。天才は凡人の想像を超えるものとはいえ、それにしても音楽家としての器がよほど大きく、そして芯の部分が柔軟であってのことだろう。
 しかし、当の本人は「私の関心は、響きの明晰性よりもっと高度の明晰性、即ち音楽的な意味の明晰性にある」とか「正確さに専念することで技術は得られるが、技術に専念しても正確さは得られない」と述べているように、音楽的な「明晰性」と「正確さ」を得るためであればアポロンにでもディオニュソスにでもなれる人だった。

ヒューマンな巨匠指揮者ワルター没 ― 1962年2月17日

 数多くの優れた音楽家が、ナチス・ドイツの暴挙を嫌い、憤怒の涙を流しながら、ヨーロッパからアメリカに亡命した。フルトヴェングラーと並び称されたドイツの大指揮者、ブルーノ・ワルター(1876〜1962)もそのひとりである。一度も来日しなかったのに、今もなお日本で最もファンの多いワルターがビバリーヒルズで他界した日である。
 ワルターが“比類ない名演”を残したのが、深い絆で結ばれていたマーラーの音楽だった。実質的に9番目の交響曲でありながら、「交響曲は9曲書くと死ぬ」というジンクスを嫌って交響曲と名付けなかった《大地の歌》の初演(1911年)を指揮したのも、ワルターだった。この作品は、主に中国の李太白の漢詩のドイツ語訳を歌詞にした6つの歌で構成されている。第3曲「青春について」は、一見明るいものの、永遠の美に憧れつつ、酒で憂さを晴らすような無常観が流れている。ワルターの命日にふさわしい愛惜の歌だ。
天は永遠に青みわたり、大地はゆるぎなく立って、春来れば花咲く。
けれど人間はどれだけ生きられるというのだ。

 ワルターはグスタフ・マーラーに才能を認められ、20世紀初頭にウィーンとミュンヘンの宮廷歌劇場で名をあげた人である。ナチス台頭後もしばらくヨーロッパにとどまっていたが、1939年に渡米、ニューヨーク・フィルの音楽顧問を務めた。戦後、ヨーロッパの楽壇に復帰し、ウィーン・フィルなどを指揮。カーネギーホールでのマーラー生誕100周年記念祭が行われ、ウィーンでもワルターが招かれ第4番をシュヴァルツコップのソロで演奏している。

大地の歌

 マーラーは1908年の夏に、熱に浮かされたように中国の詩集をテキストにしたこの作品の創作に没頭しました。自分の苦悩と不安の全てをこの作品の中に注ぎこみました。それが「大地の歌」なのです。「5番」、「6番」、「7番」、「8番」の交響曲を作曲してきた次の声楽付きの交響的作品、彼は「大地の歌」を最初は9番のつもりで書き始めて、あとでこの番号を消したのでした。
 つまりマーラーは、この「大地の歌」に交響曲としての番号をつけることを避けようとしました。なぜならベートーヴェンもブルックナーも10番目にたどりつけなかったことから、第9交響曲という観念にひどくおびえていたからです。偉大な交響曲作曲家は9番以上は書けないという迷信におびえて、この作品を交響曲と呼ぶ勇気がなかったのです。そう呼ばずにおくことで、彼は運命の神様を出し抜いたつもりでいたのです。
 その後、現在の第9交響曲にとりかかっていたときに、妻アルマに「これは本当は10番なんだ。『大地の歌』が本当の9番だからね。これで危険は去ったというわけだ!」と思わず言わずには居られませんでした。
 あぁ、運命の歯車は動き出します。結局、彼は9番の初演には生きて立ち会うことができず、10番はついに完成にも至りませんでした。神様は間近で、その告白を聞いていたのです。
 マーラーが高く評価していたワルターは、マーラーの死の半年後にこの曲を初演しました。
Mitten in dem kleinen Teiche
Steht ein Pavillon aus grünem
Und aus weißem Porzellan.

Wie der Rücken eines Tigers
Wölbt die Brücke sich aus Jade
Zu dem Pavillon hinüber.

In dem Häuschen sitzen Freunde,
Schön gekleidet, trinken, plaudern,
Manche schreiben Verse nieder.

Ihre seidnen Ärmel gleiten
Rückwärts, ihre seidnen Mützen
Hocken lustig tief im Nacken.

Auf des kleinen Teiches stiller
Wasserfläche zeigt sich alles
Wunderlich im Spiegelbilde.

Alles auf dem Kopfe stehend
In dem Pavillon aus grünem
Und aus weißem Porzellan;

Wie ein Halbmond steht die Brücke,
Umgekehrt der Bogen. Freunde,
Schön gekleidet, trinken, plaudern.


FR EMI 2C051-01209 フェリア&ワルター マ… マーラーの作品ではウィーン・フィルとの第9番(1938年録音)、キャスリーン・フェリアーが歌っている「大地の歌」(1952年録音)が昔から知られている2大名盤。それに、コロンビア交響楽団との第1番「巨人」(1961年録音)もワルターの意図をしっかりと汲んだ演奏になっている。レコーディングの仕事には戦前から積極的に取り組んでおり、1930年代のウィーン・フィルとの録音は絶品と評されている。芯からエネルギーに満ちた音楽でさえ、オーケストラの歌わせ方が実にしなやかで、繊細な響きはどこか妖しさをたたえている。

成熟し続け、円熟を重ねた。

 ワルターはアメリカのオーケストラに多大な影響を及ぼした最重要人物の一人である。彼はヨーロッパのオーケストラにある熟成された深みのある響きを、アメリカのオーケストラを使って自分なりのやり方で練り上げた。ニキシュ、マーラー、トスカニーニがアメリカに遺した足跡は確かに偉大だが、豊潤な音楽をもたらした使徒ワルターの功績はそれ以上にある。しかも老人の音楽にならず、アンサンブルの強靭さ、柔軟さ、懐の深さ、いずれの面でも不足はない。その響きは若木ではないが枯れ木でもない。今が聴き頃と言うべき円熟した音楽の実りがここにある。強さだけでなく大きさを増していくようなこの指揮者の求心力がオーケストラの響き隅々に行き渡っている。
 心臓発作で倒れてからは演奏会の数も少なくなり、彼が作り出す音楽をステレオ録音で遺すために組織されたコロンビア交響楽団とのセッションに専心し、1962年2月に85歳で亡くなった。

ブルーノ・ワルター 略歴

1876年
ベルリン生まれ
1893年
ケルン市立歌劇場指揮者
1901-13年
ウィーン宮廷歌劇場楽長
1936-38年
ウィーン国立歌劇場監督
1939年
ジェノヴァからニューヨークに渡る
1956年
演奏会の指揮から引退
1957年
コロンビア交響楽団を指揮してステレオ録音を開始
1960年
マーラー生誕100年祭で指揮
1962年
ロサンゼルスで死去




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