悲運のヒーロー*コンクールの覇者の末路 ヴァン・クライバーン ラインスドルフ指揮ボストン響 ブラームス・ピアノ協奏曲1番

武者がえし

2021年02月16日 12:50

「この若者は、他の人間の2倍の音を持っている」― ウラディーミル・ホロヴィッツ

《英レッド銀文字ラベル、DYNAGROOVE Living Stereo 盤》GB RCA SB6586 クライバーン ブラームス:ピアノ協奏曲1番 世界中で最も売れたレコードの記録を樹立した、1934年生まれのアメリカのピアニスト、ヴァン・クライバーン。その名を冠したコンクールに辻井伸行さんが優勝したことで、日本でも再び栄光のピアニストとしてのクライバーンに光が当てられています。

 時代は東西冷戦のまっただ中、鉄のカーテンの向こうの国で、彼、ハーヴィ・ラヴァン・クライバーンJR.が、ソヴィエトが威信をかけて開催した「第1回チャイコフスキーコンクール」で優勝したのが1958年。コンクールでリヒテルに満点を付けさせた才能の閃きは並外れていたことだろう。ルイジアナの田舎青年が一夜にして国際的スターののしあがる、正にアメリカンドリームの具現。当時23歳だった彼は英雄扱いされた。一躍アメリカのヒーローとなり、凱旋パレードに始まり、記念公演・レコーディング・メディア出演 … と過密なスケジュールを強いられる毎日をおくることとなる。ライナー指揮シカゴ交響楽団やオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団など、全米中でもスーパー・オーケストラと共演、レコーディングを行いました。この《ブラームス・ピアノ協奏曲第1番》もそうした〝レコード〟録音の一つで、ラインスドルフ&ボストン交響楽団とのセッション録音。個性的な演奏で発売当時は賛否両論巻き起こった一枚です。

 クライバーンにとってのデビュー盤となった1958年の記念碑的なチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番にはじまり、フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団らと共演したベートーヴェンからラフマニノフに至るピアノ協奏曲の数々、お得意のショパン、ブラームス、ドビュッシーなどロマン派のピアノ作品集、アンコール小品集、そして RCA への最後の録音となった1977年のブラームス・アルバムにいたるまで、クライバーンの約20年の間に、20数枚の売れるレコードを録音し、それは「ショービジネスのドル箱スター」と言える20世紀に大きな足跡を残した。

 ゴージャス過ぎる大編成オーケストラをバックに、ベートーヴェンもリストもラフマニノフもプロコフィエフも、「作曲者の時代性」は無視され、ほとんど同じ味付けで弾き飛ばされるハレの雰囲気と爽快感。録音時の「アメリカの時代性」そのままの、ビルボードで上位売上げ記録となったのが頷ける。コンクール直後に録音されたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番はわずか2週間で100万枚の売上を記録、ビルボード誌アルバム・チャートで7週連続1位という凄まじい人気となりました。この記録を保持することや、ショービジネスで期待される上向き売上の実態は如何ばかりだったか。ロシアの作曲家、チャイコフスキーと認知され、劈頭のダイナミックな音楽と、その美しい名曲は愛好されていただろうから売れただろう。後に続く、これらの派手なプログラムを前にして、テンポも技巧も必要以上の小細工をしないアプローチが、希少なほどに潔く感じるヴァン・クライバーンの美点といえるピアニズムだ。

 クライバーンは3歳からリストの直系の弟子でもあった母からピアノを習い始め、翌年には公衆の前で演奏、12歳のとき、州のコンクールに優勝してヒューストン交響楽団と共演しています。この共演で注目を集めることとなったクライバーンは、ジュリアード音楽院に進んでロジーナ・レヴィーンに師事、在学中にもいくつもの賞を受賞しています。クライバーンの現役時代の芸風は、優れたテクニックと美しい音に恵まれたもので、端正な解釈をスケール大きく表現する手腕は実に見事なものでした。
 華やかでクライバーンの天才をアピールし続ける、有名名曲が無尽蔵にあればよかったが、70年代に入ると急激に彼の名は話題に上らなくなってしまう。コンクール優勝後の異常なまでの多忙さは繊細なクライバーンにはこたえたのだろう、と言うが、才能を削るだけだったのは残念だ。頭でっかちの聴き方を捨ててクライバーンのピアノに身を任せると、むしろ体温が感じられる音楽は他からは聴けない不思議な魅力だ。
1964年録音。リビングステレオ、優秀録音。

通販レコード詳細・コンディション、価格

GB RCA SB6586 – VAN CLIBURN, Erich Leinsdorf Conducting The Boston Symphonic Orchestra ‎– BRAHMS - Piano Concerto no.1 in D minor op.15
レコード番号
SB6586
作曲家
ヨハネス・ブラームス
演奏者
ヴァン・クライバーン
オーケストラ
ボストン交響楽団
指揮者
エーリヒ・ラインスドルフ
録音種別
STEREO


RED WITH SILVER LETTERING, STEREO 1枚組(160g),Stamper 8S/6S。

ジャケット状態
M-
レコード状態
EX++
製盤国
GB(イギリス)盤

通販レコード

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ダイナグルーヴ(Dynagroove) ― は、1963年に米国RCA Victorによって導入されたLPレコード・システムで、その当時、雑誌やレコード店に行くと広く喧伝されていました。
グルーヴ(groove)はレコードの溝のことで、ダイナミックと合わせた合成語。レコードの裏表紙、枠組み内のライナーノーツの右下に説明があります。
 このダイナグルーブ方式のレコードは、録音するときからレコードになるまで、数々の新しい研究の成果を組合わせて、これまでにない明快な音を生み出しています。
 それは、最新の電子技術、音響心理学、品質管理技術により、新しい録音機器、電子頭脳、品質管理方式を開発して生み出したレコードです。

四つの特色

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    プレーヤーの音量をどんなに小さくしぼっても、低音から高音まで鮮明に聞くことが出来ます。
  2. 完全なプレゼンス(臨場感)が得られます。
    このレコードでは、いつも生々しい演奏を聞くことができ、コンサート・ホールにいるような印象を受けます。
  3. 歪がないこと 。
    このダイナグルーブ方式のレコードでは盤面の内側でも音が歪みません。
  4. そのまま皆様の機械にかけて完全な音が聞けます。
    ダイナグルーブのレコードは、どんなステレオ電蓄でも、これまでにない素晴らしい音が聞けます。

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