ヴァイナル愛好ファースト・チョイスの決定盤*ハイフェッツ、ミュンシュ指揮ボストン響 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲

武者がえし

2025年04月23日 17:15

余りに強烈な個性が、このベートーヴェンに宿っている。

 数多くのレコードは、古典派の名曲から近現代のショーピースまで及び、完璧な技巧はハイフェッツが活躍した時代を共有した人々を驚かせ、感嘆させた。ピアノなどと違って自分で音程も音色も作らなければならなら、この扱いにくいヴァイオリンの演奏精度を、これまた極限まで高めた音楽家として20世紀の大ヴァイオリニストとしてクライスラー、ハイフェッツ、シゲティのベスト3は揺るがない。
 コンクール制度によって技術的水準が天井知らずに上がってゆく現代でも、現今のすべてのヴァイオリニストにとってハイフェッツは神様のような存在だが、演奏史上の格付けに「最高」の評価を与えない評論家、愛好家は今以って少なくない。SPレコード時代、「あれは音楽ではない。機械だ」といわれた。精神主義華やかりし、フルトヴェングラーやトスカニーニが君臨した「音楽が人々にとって偉大であった時代」。作品の背景や、解釈から、いきなりスパっと割り切れた名人技を示されたのだから、人々が戸惑ったのも無理からぬ処であろう。ハイフェッツのテクニックは完璧であり、音色の輝かしさは他の追随を許さず、しかも、好不調の波も僅かで、いかなるときも破綻を来たすことはなかった。録音から窺う限り、ハイフェッツの演奏スタイルは生涯変わらなかった。クライスラーは約四半世紀後輩のアメリカ・デビュー盤を聴いたあとで一言、「私達ヴァイオリニストは、全員膝で楽器のネックをへし折って転職しなければならない」と語った。もちろん年齢の加算による覇気の深まりは増すが、16歳の初録音から、「ラスト・コンサート」と名付けられた1972年、71歳のライヴ・レコーディングに至るまで、スタイルに変化がないだけではなく、解釈と内容も変わっていない。進歩していないのではない、20歳未満にして彼の芸術は完成されていたのである。

 ベートーヴェンのコンチェルトも胸がすく。トスカニーニ、ミュンシュとの共演盤があるが、あまりにうますぎ、ベートーヴェンがパガニーニの技巧曲のように聴こえる場面が出てくるが、他の誰よりも速いテンポで健康的に一気呵成に進めつつ、抜群のニュアンスを堪能させてくれる。それが即ち、バッハ=ベートーヴェン=ブラームスと繋がる、ドイツ主流派の音楽では決定的名演と推し難いところだ。ハイフェッツの演奏は『グローバル化』された音。ロシア生まれだから、チャイコフスキーが素晴らしい、と単純に言えない。ショーソンやサン=サーンスにフランスのエスプリは聴けない。『ハイフェッツ』そのものを聴かされることで終始する。いかなる国や地方の文化や歴史からも断絶された『世界統一新規格』になっている。バッハやベートーヴェンにドイツの質実剛健はなく、さらに、バッハとブラームスの様式の差別化もない。しかし、いま聴いてみると、あまりにうますぎただけで、すっとした流れの中になんともいえぬ表情がつき、節回しなどは十二分に個性的だと思う。

通販レコードの案内

《仏レッド・シール盤》FR RCA FRL1 0889 ヤッシャ・ハイフェッツ ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲

 ハイフェッツの演奏の特異性については、完璧・精巧無比・人間の限界を極めた、など様々取り沙汰されているが、情熱と厳格さが混淆していることを説明する最もよい例が、このミュンシュ指揮ボストン交響楽団をバックにしてのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。20世紀初頭頃までのクラシック音楽の演奏には曖昧さが許され、またかえってそれをよしとする風潮があったと言える。クライスラーやエルマンの録音からは、技術的問題も含め、譜面に指示のない表現をよく行うことに気付く。その良し悪しについてはひとまず置いておき、当時は奏者の個性を前面に出す事が重んじられていたようである。これに対してハイフェッツは、冷静かつ正確に、一切の妥協を排除した解釈を行なった。現代では作曲者の意図を最も適切に表現する事が重んじられている。鋭い運弓と力強いヴィブラートによって創り出されるその音色は非常に特徴的である。演奏家それぞれの個性などという次元ではなく、ハイフェッツがヴァイオリンを奏でることで、別質の新しい楽器がそこにあるかのごとく錯覚を起こしそうになる。その余りに強烈な個性が、このベートーヴェンに宿っている。
 製作陣はRCAの一軍、ジョン・プファイファー&ルイス・チェースで 10+/PERFORMANCE/GOOD の高い評価で、現在でもトップレベルの人気盤の地位を維持している。
1955年11月27〜28日ボストン、シンフォニー・ホール、ジョン・プファイファー&ルイス・チェースによる優秀録音、名盤。

■仏 レッド・シール盤。

通販レコード詳細・コンディション、価格

FR RCA ARL1 0889 – Jascha Heifetz, Charles Munch, Boston Symphony Orchestra – BEETHOVEN ‎– Violin Concerto in D Op.61

プロダクト

レコード番号
ARL1 0889
作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
演奏者
ヤッシャ・ハイフェッツ
オーケストラ
ボストン交響楽団
指揮者
シャルル・ミュンシュ
録音種別
STEREO

販売レコードのカバー、レーベル写真

RED WITH BLACK LETTERING, STEREO 1枚組(140g), Release 1959。

コンディション

ジャケット状態
M-
レコード状態
M-
製盤国
FR(フランス)盤

通販レコード

詳細の確認、特別価格での購入手続きは品番のリンクから行えます。オーダーは品番 / 16461特別価格1,760円(税込)通常価格2,200円「クレジットカード決済」「銀行振込」「代金引換」に対応しております。


通販レコードの購入にあたって・確認とお問い合わせは

プライバシーに配慮し、会員登録なしで商品をご購入いただけます。梱包には無地のダンボールを使用し、伝票に記載される内容はお客様でご指定可能です。郵便局留めや運送会社営業所留めの発送にも対応しております。

初期盤・クラシックレコード専門店「RECORD SOUND」
入手のメインルートは、英国とフランスのコレクターからですが、その膨大な在庫から厳選した1枚1枚を大切に扱い、専任のスタッフがオペラなどセット物含む登録商品全てを、英国 KEITH MONKS 社製マシンで洗浄し、当時の放送局グレードの機材で入念且つ客観的にグレーディングを行っております。明確な情報の中から「お客様には安心してお買い物して頂ける中古レコードショップ」をモットーに運営しております。


関連記事