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2017年02月11日

名曲カルテ◉ロマンティック協奏曲の母 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

Jakob Ludwig Felix Mendelssohn Bartholdy

バッハの音楽の復興で貢献、ドイツ音楽界の重鎮

(1809.2.3 〜 1847.11.4、ドイツ)

Felix-Mendelssohn後期ロマン派の大作曲家。北ドイツの富裕な銀行家の家庭に生まれたためか、彼の音楽には全く暗さがなく、明るく甘美な香りの漂っている作品を書き続けた。9歳でピアノの公開演奏をして喝采を博し、17歳の時シェークスピアの戯曲を読んで代表作の「真夏の夜の夢」序曲を作曲した。20歳の年にイギリス、その翌年イタリアに旅行し、その時の印象をもとに「フィンガルの洞(くつ)」序曲や「スコットランド」、「イタリア」の2つの交響曲を作曲した。

 彼の音楽の特色は、“音の風景画家”と評されているように風景描写の巧みさにあり、上記の作品によくそれが現れている。また優美で流麗な楽想も特色の一つで「ヴァイオリン協奏曲」、ピアノ曲集「無言歌」、歌曲「歌の翼に」などの美しい作品を生んでいる。

ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

 メンデルスゾーンはその生涯に、この《ヴァイオリン協奏曲》をたった1曲しか作曲しなかったとしても、おそらく、その名は永世に伝えられたであろう。それは、この曲が古今の「ヴァイオリン協奏曲」を通じて女王の地位にあるからである。では、皇帝は? むろんベートーヴェンである。
 第2次世界大戦前まで、メンデルスゾーンは「ヴァイオリン協奏曲」を、この《ホ短調》しか書かなかったといわれていたが、1951年にヴァイオリニストのメニューインがロンドンで《ニ短調》の草稿を発見して以来、現在では2曲ということになっている。しかし、彼が13歳の時に作曲した、この《ニ短調》は少年の作とは思えぬほど、しっかり書かれた作品には違いないが、内容的には《ホ短調》とは雲泥の相違である。

 メンデルスゾーンが、この《ホ短調》の作曲に着手したのは、1,838年(29歳)のことであるが、完成したのは、それから6年後の1,844年(35歳)の9月であった。速筆家の彼にしては、珍しく長年月をかけているが、これにはいくつかの理由が有る。着手した前年にセシル・シャルロット・ソフィー・ジャンルノーと結婚し、幸福で多忙な新婚の生活に追いまくられていたこと、ライプツィヒ音楽院の創設に狂奔したり、バーミンガム音楽祭やベルリン芸術アカデミーの指揮者として演奏活動にも力を割かなければならなかったことなど、とにかく、落ち着いて仕事のできる状態ではなかったということが、その主な理由だが、もう一つは、当時ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート・マスターをしていたフェルディナント・ダヴィッドの助言を忠実に聞き入れながら、慎重にペンを進めていたからでも有る。
 初演は作曲の翌1,845年の3月、ゲヴァントハウスの演奏会で行われた。その時、指揮台に立ったのはガーデで、ヴァイオリン独奏は無論ダヴィット、一般の評判は大変良かったという。

ヴァイオリン協奏曲のアダムとイヴ

  イギリスのスターンディル・ベネットはベートーヴェンと、このメンデルスゾーンの《ヴァイオリン協奏曲》とを比較して、『アダムとイヴ』と評しているが、この評は全面的に肯定できないけれど、たしかに華麗さ、繊細さ、流麗さという点では、ベートーヴェンよりずっと女性的である。
 第1楽章 アレグロ・モルト・アパッショナート、第2楽章 アンダンテ、第3楽章 アレグレット・ノン・トロッポ。曲は古典的形式に則って書かれているが、全体にロマンティックで随所に新しい試みがなされている。例えば、3つの楽章を全部継げてしまったり、第1楽章では、冒頭から独奏ヴァイオリンで第1主題を提示したり、自らカデンツァを書いて情緒の途切れることを防いだり、といった具合に、当時としては相当大胆な手法で書かれているのが特徴だ。
鑑賞のおすすめ盤は。 流石に大衆的な人気を持つ曲だけあって、現在活躍している殆どのヴァイオリニストは、この曲を録音しているがダヴィッド・オイストラフ、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏を凌駕するものは、未だに一枚も出ていない。オイストラフの円熟期の演奏だけに、すこぶる密度が濃く、表情も豊かである。第2楽章の抒情的な主題の歌わせ方など、溜め息の出るような美しさだ。この曲の解釈には演奏のスタイルは少々古くとも、彼のような暖かな心がまず必要である。
 この他では、スターン、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団とシェリング、ドラティ指揮ロンドン交響楽団の2枚が良い、両者ともオイストラフ盤ほどの芸の厚みはないけれど、スターン盤は堅実な技巧に支えられた瑞々しい表現に惹かれるし、シェリング盤は虚飾のない端然とした演奏態度に魅せられる。
NL FONTANA 664 021ER スターン メンデルスゾーン・ヴァイオリン協奏曲
NL PHILIPS 838 417LY ヘンリク・シェリング メンデルスゾーン&シューマン・ヴァイオリン協奏曲



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