「クラシック音楽専科ガイド」
オリジナル稀少盤、アナログ・レコード優秀録音盤のアナログサウンド! 

1960年代、70年代、80年代までのクラシック音楽のアナログLPレコードの、欧米で発売された当時の『オリジナル盤』初版盤、レアなレコードぞろい。優秀録音と評価の高い録音をメインにコンディションの良いものを案内しています。


2017年01月20日

名曲名盤縁起◉生と死という人間の宿命を思わせる甘美な歌〜ギヨーム・ルクー《ヴァイオリン・ソナタ ト長調》

鹿鳴館で蓄音機の試聴会が行われる ― 1879年1月20日

 日本に蓄音機が紹介されたのは、エジソンの発明からわずか2年後の1879年(明治12年)のこと。文明開化のシンボルだった東京の「鹿鳴館」で大規模な試聴会が開かれました。この時の蓄音機は、ロウ管と呼ばれる円筒型レコードに長唄や義太夫が録音され、一般への普及のきっかけとなりました。1887年(明治20年)に円盤レコードが登場すると、浪曲や歌舞伎役者の声が吹き込まれ、大正時代にはレコードが世の中の流行歌を生み出すほどになりました。
 世界中が未知の音楽を聞くことをレコードが届くのを待った。現在はレコードが届く前に音楽は聞いているケースが殆んどだ。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートも元旦の生中継を観てから、レコードが届くまでの楽しみが増した。

 新春のウィーン・フィル、ニューイヤー・コンサートの指揮はグスターヴォ・ドゥダメルが2017年の宴を指揮した。創立175年のウィーン・フィルは記念の演奏会の指揮者に「100年に1度の天才」と呼ばれる若干35歳の若い指揮者を選んだ。楽団員は「ドゥダメルの作り出す音楽に期待し、ドゥダメルが求める演奏ののためなら120%の力を出し切る」とインタビューで語っていて、信頼を寄せているのを強く感じた。ウィーン・フィルとは、2007年ルツェルン音楽祭で初共演。その後もたびたび客演を重ね、厚い信頼関係を築いてきました。共演から10年を迎える今年、ドゥダメルは最高の舞台で1年のスタートを切った。
 演奏風景はライブで世界40カ国以上に中継され、世界中の人々が新年の華やかなコンサートを楽しむ毎年恒例の一大イベントだ。ニューイヤーコンサートが始まったのは1939年。ウィーン出身の名指揮者クレメンス・クラウスの指揮により初めて開催され、1941年1月1日の第2回からは元旦の正午に開催されるようになった。1955年以降ヴィリー・ボスコフスキーが指揮をし、1959年各国に中継され始めた頃から人気が高まった。NHKの年始めの音楽イベントでもあり、地上は、BS、FM放送で同時放送した時もあったけれども、数年前からETVとFMだけになり、今年もBSでは三が日が過ぎた後の最初の日曜日の夜の放送だった。
GB DEC  147D1-2 ウィリー・ボスコフスキー ニューイヤ… ウィリー・ボスコフスキーとウィーン・フィルは毎年、新春にウィンナ・ワルツのレコードを発売するようになるが、当初は前もって録音しておいて新年に発売を合わせるスタイルだった。初めて正真正銘の新年の演奏会がレコードになったのが、「GB DECCA 147D1-2 ウィリー・ボスコフスキー ニューイヤー・コンサート」だ。ニューイヤーコンサートの曲目の選定は、ヨハン・シュトラウス協会会長やシュトラウス研究家など「シュトラウス一家の権威」が集まって行われている。そこで決まった提案を指揮者とウィーン・フィルに送付し、この両者で検討される。この際、取り上げられる回数の多いポピュラーな曲と、なじみの薄い曲とが出来るだけ交互になるよう吟味されるという。
 必ず毎年、シュトラウス・ファミリーの新曲 ― 楽友協会に楽譜はあるが、ウィーン・フィルがまだ演奏したことのなかった曲 ― を数曲含めているが、数年前からはシュトラウス周辺の作曲家も演奏されるようになった。今年は、レハール、スッペ、ニコライ、そしてワルトトイフェルの《スケートをする人々》がプログラムされた。ポピュラー・ミュージックといえるほどだが、クラシック音楽の演奏会でプログラムにのぼるのは珍しい。この一曲で作曲家として、その名前を残したと言えそうな一人だ。

 今日という日は、フランスの作曲家・エルネスト・ショーソン、ロシア出身のアメリカのバイオリニスト・ミッシャ・エルマン、イタリアの映画監督・フェデリコ・フェリーニの誕生日。ポピュラー・ミュージックに目を向けると、10CCのボーカリストでギタリストのエリック・スチュワート、キッスのギタリスト・ポール・スタンレーの誕生日で、ビートルズのアメリカでのデビュー・アルバム『ミート・ザ・ビートルズ』が1964年に発売された。

誕生日と命日が同じ作曲家ルクー ― 1870,1894年1月20日

Guillaume Lekeu 演奏家、作曲家で夭逝して記憶に残っていることは多い。早世した演奏家、作曲家は円熟味が無いが、モーツァルトやシューベルトが22歳の時に書いた作品を円熟していないと批判するのと同じである。彼らの音楽は最初のものから完成された芸術であり、天才にとって年齢が無意味であることを示す証である。円熟味を味わいたいと思う気持ちは満たされないが、“スペインのモーツァルト”と呼ばれたアリアーガは、20歳になる前に早逝。『もう10年生きていたら、と惜しまれる天才の“絶筆”』として、《交響曲 ニ短調》を1月17日の命日に紹介しましたが、誕生日と命日が同じになることは、そうは無い。長命であれば、妙に律儀な人だったねぇ、と珍しがられるだろうが、それが僅か24歳の天才肌の音楽家となれば、“神様の意志”は人々の恨みを買ったかもしれない。夭逝したベルギーの作曲家、ギヨーム・ルクーのことである。
 パリ音楽院で学んだルクーは、当時の大作曲家フランク門下の俊才だった。フランク門下や彼を信奉する者たちをフランキストと呼ばれるほどだった。この師は同じベルギー出身の若者の才能を愛し、やはり同国の作曲家でヴァイオリンの巨匠だったイザイも、ルクーの《ヴァイオリン・ソナタ ト長調》を盛んに演奏して紹介に努めた。しかし、ルクーは腸チフスに罹って、呆気なくこの世を去ってしまう。
 現在、唯一演奏される彼のヴァイオリン・ソナタは、3楽章から成る情熱的で高貴さもたたえた音楽。「トレ・ラン(きわめて遅く)」と指示された中間の緩徐楽章は、瞑想的な詩情に溢れた調べが、生と死という人間の宿命を思い起こさせる。



 ギョーム・ルクーは1870年1月20日にベルギーに生まれ、フランスのポワティエで教育を受け、15歳で作曲を始めた。1888年にパリに出てセザール・フランクに師事、1890年にフランクが亡くなった後はヴァンサン・ダンディに師事する。1891年にはローマ賞に応募し、カンタータ『アンドロメダ』で2位を獲得したが、この結果に納得せず受賞を辞退した。このカンタータ『アンドロメダ』を聴いて感銘を受けたのが同国の大ヴァイオリニスト、ウジェーヌ・イザイで、彼はまだ無名に等しい青年に作曲を委嘱。ルクーはその期待に応え、1892年に名作《ヴァイオリン・ソナタ》を完成させる。
 その後、『アンジュー地方の民謡による幻想曲』などを手がけたが、1894年1月21日に腸チフスにより急逝した。急逝により作曲中だったチェロ・ソナタやピアノ四重奏曲はダンディによって補筆出版されている。

ルクー自身も「私は自分の音楽の中に己の魂のすべてを投入すべく苦心した」と語っていた。

 ギヨーム・ルクーは大変な情熱家で、フランクのように献身的な性質を持ち、全身全霊を傾けて音楽にのめり込んだ。とくに偏愛したのは後期ベートーヴェンとワーグナーで、その作品を研究し、多大な影響を受けたようである。1889年にバイロイト詣でをし、『トリスタンとイゾルデ』を観て興奮のあまり気絶、担架で運ばれたというエピソードも有名だ。
「私は自分の音楽の中に己の魂のすべてを投入すべく苦心した」と述べているルクーの音楽は、《ヴァイオリン・ソナタ ト長調》が象徴的だ。冒頭の1小節をとってみても、「ヴァイオリンはこのように歌うのが最も美しいのだ」という信念が伝わってくるかのようだ。ゆるやかに下降して上昇するこのフレーズだけでルクーは音楽史に名を残したと断言したくなるくらいに、心がとけそうになる。わたしはフランキストではないが、周りに煙たがれるほどのワグネリアンだからかもしれないが、フランクの循環形式を採り入れた構成で、なおかつワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』の雰囲気をまるごと持ち込んだような陶酔感、恍惚感が強い印象を残す。
 第1楽章はソナタ形式。陶酔的な序奏が作品の雰囲気を決定する。ヴァイオリンに負けないくらいピアノの活躍が目立ち、お互いに情熱の高まりを見せながら、長い展開部を経て再現部にいたる。序奏の旋律が要所に織り込まれ、全体の均整もとれている。
 第2楽章は三部形式。「ごく穏やかに」という指示で、8分の7拍子で始まるが、曲が進むにつれてリズムが複雑に変化する。翳りのある民謡風のメロディーが美しく、静かに不安定に揺れながらも、調和が崩れることはない。瞑想的な雰囲気もある。
 「極めて活発に」と指示された第3楽章はソナタ形式で、情熱的な主題を提示する。緊張と弛緩を繰り返した後、第1楽章の序奏部が現れ、一時的に美の中で逡巡するが、再びエネルギーを取り戻し、ヴァイオリンが高らかに歌い出す。そしてピアノと共に劇的なコーダを形成する。
鑑賞のおすすめ盤は。 クリスチャン・フェラスの演奏は非常に耽美的で、第1楽章冒頭はまるで天使の溜息のような美しさだし、ベルギー出身のアルテュール・グリュミオーの2種類の録音(1955年、1973年)がベーシックな演奏だろう。どちらも気品のある歌い回しで魅力的だが、上品すぎるように個人的には、艶やかさを楽しみたい。1981年に日本で録音されたローラ・ボベスコの演奏も大事な遺産のひとつ。希少だけどアナログレコードで聴くとまた濃厚に香り立って聴こえますが、入手が難しいので最近のCDを第一に推したい。
クリスチャン・フェラス ルクー:ヴァイオリン・ソナタ
アルトゥール・グリュミオー ルクー:ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:子供の夢/ヴュータン:バラードとポロネーズ
ローラ・ボベスコ フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
ジャン=ジャック・カントロフ ドビュッシー、ラヴェル、ルクー:ヴァイオリン・ソナタ



.

https://fm-woodstock.com

通販サイトで毎日入荷、販売しています。

商品検索
同じカテゴリー(協奏曲)の記事画像
熟成された濃密な男盛りを味わう*オイストラフ フルニエ ブラームス・ヴァイオリン協奏曲、二重協奏曲
オーディオの拘り甲斐を感じる*ミルシテイン スタインバーグ指揮ピッツバーグ響 ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲
個性は普段着から*イダ・ヘンデル、ベルグルンド、ボーンマス響 シベリウス&ウォルトン・ヴァイオリン協奏曲
♪のびやかな〝うた〟が魅力的 フルニエ&セル&ベルリン・フィル ドヴォルザーク・チェロ協奏曲
語り継がれていく名盤 聴き手の心を震わせる、ヨハンナ・マルツィの誉れ高き名盤 随所に女流らしい味わいがある。
ヴァイナル愛好ファースト・チョイスの決定盤*ハイフェッツ、ミュンシュ指揮ボストン響 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
同じカテゴリー(協奏曲)の記事
 熟成された濃密な男盛りを味わう*オイストラフ フルニエ ブラームス・ヴァイオリン協奏曲、二重協奏曲 (2025-04-25 07:45)
 オーディオの拘り甲斐を感じる*ミルシテイン スタインバーグ指揮ピッツバーグ響 ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲 (2025-04-24 21:04)
 個性は普段着から*イダ・ヘンデル、ベルグルンド、ボーンマス響 シベリウス&ウォルトン・ヴァイオリン協奏曲 (2025-04-24 10:10)
 ♪のびやかな〝うた〟が魅力的 フルニエ&セル&ベルリン・フィル ドヴォルザーク・チェロ協奏曲 (2025-04-24 00:03)
 語り継がれていく名盤 聴き手の心を震わせる、ヨハンナ・マルツィの誉れ高き名盤 随所に女流らしい味わいがある。 (2025-04-23 21:00)
 ヴァイナル愛好ファースト・チョイスの決定盤*ハイフェッツ、ミュンシュ指揮ボストン響 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 (2025-04-23 17:15)

名盤,魅力,アナログレコード,通販,熊本地震
登録するとコメント可能になります。通常はコメント欄は表示していません。コメントを表示されたくない時はコメントに明示してください。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。