アナログレコードの魅力✪昭和の名盤レコードコンサートでご体験ください

Willem Mengelberg

　ドイツ人の両親の間にオランダのユトレヒトで生まれた。母より６歳からピアノを教えられ、８歳で作曲する。父が古い教会音楽を好んでいたために、最初は聖歌隊員として活躍した。その後ユトレヒトの音楽院を経てケルンでも学び、1891年、20歳の時にルツェルン市立管弦楽団に就任した。そして1895年、わずか24歳でアムステルダム・コンセルトヘボウの音楽監督に就任した。1922年からはニューヨーク・フィルの常任も兼務し、マーラーとも交遊を深め、オランダにてマーラー祭を開催し、オランダでオリンピックが開催された時には国家を代表して演奏するなど、その活躍ぶりはヨーロッパ中に轟いた。しかし、ナチスがオランダに侵攻した際に演奏をしたのがもとで戦後はスイスに追放され、失意の日々を送った。そして、演奏禁止が解除される直前、隠遁生活を送っていたスイスのツォルトで79歳の生涯を閉じた。

感情に押し流されない徹底した分析からの計算された解釈

「楽員が80人いれば、80回注意しなければならない」と語ったほど、メンゲルベルクのリハーサルはしつこかった。「ひとりがすべてをぶち壊す」というのも口癖で、ウィーン・フィルは彼を「あら探し屋」と呼んで恐れた。しかし、このような訓練を経たために、コンセルトヘボウは短時間で一流の団体にまで成長したのである。
　芸風は徹底して19世紀ロマン派風で、誇張とも思えるほどの極端な緩急の差をつけて効果を狙い、絃楽器には頻繁にポルタメントを使用して異常な甘美さを現出した。
　録音はラッパ吹き込みから積極的に行っているが、その中でも最も有名なのが独テレフンケンに録音したチャイコフスキーの交響曲第６番「悲愴」（1937年）であろう。そのテレフンケン以前の、英コロンビアのＳＰ録音を集大成した中にもワーグナーの「ローエングリン」第１幕前奏曲、リストの交響詩「前奏曲」、マーラーの交響曲第５番のアダージェット、ブラームスの交響曲第３番など、彼らしい濃厚な演奏が多く含まれている。
　ライヴ録音のマーラーの交響曲第４番（1939年）をはじめ、ベートーヴェンの交響曲全集（1940年）、シューベルトの「ロザムンデ」の音楽（1940年）、バッハの「マタイ受難曲」（1939年）などもメンゲルベルクの真骨頂である。ほかに、コダーイの「孔雀」による変奏曲（1939年）、バルトークのヴァイオリン協奏曲（1939年）の世界初演の録音もある。