「クラシック音楽専科ガイド」
オリジナル稀少盤、アナログ・レコード優秀録音盤のアナログサウンド! 

1960年代、70年代、80年代までのクラシック音楽のアナログLPレコードの、欧米で発売された当時の『オリジナル盤』初版盤、レアなレコードぞろい。優秀録音と評価の高い録音をメインにコンディションの良いものを案内しています。


2019年12月17日

最円熟期ならではの甘美で豊麗 フランチェスカッティ、オーマンディ指揮フィラデルフィア管 ブラームス・ヴァイオリン協奏曲

その音はするりと耳の中にすべりこみ、身体中に幸福感が広がっている。

「贅沢は敵だ」という言葉があります。勿論、その反意語は『貧乏は美徳』です。この言葉は、たぶん聖書マタイ伝の「富める者の天国に入るは難し」あたりが源流になっているのだろうと思いますが、宗教的な、あるいは倫理的な意味で使うことはともかくとして、いわゆる芸術の世界に使われた場合はどうも、釈然としない。それは実生活の貧しさが魂の高貴さの、あるいはその作品の高貴さの証であると言っているとも受け取ることになります。ある演奏の音色感の豊麗さが、つまりはその内容の貧しさの証左である、と言ってるようで、それがクラシック音楽演奏を評価する時の判断尺度を担っていることが大きいと感じることです。
 こう切り出したのも、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏について、トスカニーニやストコフスキーの時代と反する言い方で語られることが多いのに気づいているからです。よく“フィラデルフィア・サウンド”といわれる、このオーケストラの響きの美しさを、ただそうした言葉だけで退けてしまってもいいものでしょうか。
 オーマンディの名は、やがて忘れられると思う。ナチス・ドイツでヒットラーが政権をとったことが引き金にあるが、ライナー、セル、オーマンディ、ショルティはアメリカで成功を収める。抜群の耳と統率力の持ち主で、仮借ない完全主義者らは音楽新興国アメリカで戦後、瞠目に値する成功を収め得たのは共通してハンガリー出身者であること。もともとハンガリーは700年続いたハプスブルク帝国の中核国家のひとつで、オーストリア=ハンガリー二重帝国の一方の雄でもあった。フルトヴェングラーの前任者で、ベルリン・フィルを世界一に育てた功労者のアルトゥール・ニキシュの出自もハンガリーである。
 国家の統一が19世紀末まで成されていなかったドイツなどとは、文化の底力が段違いだったハンガリーを故郷とする指揮者たちは揃って、「徹底した独裁型」、「楽員に反論の余地を与えない抜群の耳の持ち主」であったこと、それを具現化する指揮法をマスターしていたことが〈実務能力〉として買われた。ドヴォルザークを国民音楽院の初代校長として招聘したエピソードは知られるところだが、多民族国家であり、加えて第2次大戦の戦中、戦後は亡命音楽家の溜まり場であったアメリカで、指揮者は一から十まで自分の音楽を指示し、それを忠実に実行せしめる強烈な存在として君臨して、職を求める雑多な亡命音楽家たちを恐怖の鞭を以って統率し、アメリカのオーケストラ・サウンドを創造した。その音楽を時のアメリカ人評論家らが褒め、聴衆は喜び、テレビ映画〈刑事コロンボ〉でコロンボ警部が自慢するセリフで「クラシック音楽のコレクションを持っています」とある通り、レコードは売れた。音楽は所詮ビジネスである。
 一方、同時期にバルビローリ、クーベリック、マルティノンなどはオーケストラとの共同作業で味のある音楽を造ろうと試みて、音楽の歴史と伝統の欠如している国で苦渋に満ちた歳月を過ごしたうえ、お役御免の憂き目を被っている。
 そしてハンガリーは、全欧ピアノ界の覇者であるリスト、永らく欧州ヴァイオリン界の帝王の地位にあったシューマン、ブラームスの盟友ヨアヒムがいる。とくにヴァイオリンの世界においては20世紀の名人の過半が奏法の源流をハンガリーに仰いでいることも付言しておく。
 そのヨアヒムが初演してカデンツァも書いている、ブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」は、名手フランチェスカッティのヴァイオリンが素晴らしい聴きもの。録音当時53歳のフランチェスカッティは、技術、音色、情熱のいずれも非の打ち所がなく、オーマンディのバックを得て実に素晴らしい音楽を作り上げています。この曲を好きな人には逃がせないレコードと言えるでしょう。フランチェスカッティ最円熟期ならではの甘美で豊麗なヴァイオリンの音色で聴かせる鮮やかなブラームスは彼のベスト演奏の一つと言える。
 音楽の中に、あるいは演奏の中に人生の意義や人間の生き方を聴き取る。それを否定しません。ブラームスの協奏曲には、そういう側面は重要でしょうが、このレコード、まず聴いてみて下さい。独奏ヴァイオリンの妙技、そしてオーケストラの唖然とするようなアンサンブルの冴え、さらには多彩で豊かな音色、それらがあるときは優美に、ある時は激しく、又物憂く、あるいは陽気に、あるいはおののくように、そしてあえかに、または嫋々と響くのです。それは、きっとあなたを音楽を聴く喜びに心地良い陶酔に誘ってくれるに違いありません。

オーマンディと天下の銘器。

 かつて『フィラデルフィア管弦楽団という天下の銘器は、ストコフスキーによってつくられ、オーマンディによってかき鳴らされる」といわれたものだ。この言葉は、オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団との関係を巧みに言い当てたものといってよい。
 フィラデルフィア管弦楽団は、120年近い歴史を持つアメリカ有数のオーケストラであるが、世間の注目を集めるようになったのは3代目の常任指揮者、レオポルド・ストコフスキーの時代 ― 1913年から1936年までの23年間である。彼は、その在任期間中、世界中から優秀なプレイヤーを集め、厳格な訓練を施して、こんにちのこのオーケストラの屋台骨を築き上げた。
 そのストコフスキーのメガネにかなったのが当時、ブダペスト国立音楽院ヴァイオリン科教授の地位を捨てて渡米、指揮活動をしていたオーマンディであった。それから実に40年の長きに渡って、彼はこのオーケストラの常任指揮者の地位を保ち続けている。ひと口に40年というが、これは大変なことである。彼が凡庸な指揮者だったとしたら、とてもこのような長期間に渡って黄金の椅子を温めていることは出来なかったろう。如何にオーマンディの実力が秀抜であるかを如実に示したものといってよい。
 彼が、このフィラデルフィア管弦楽団という名人オーケストラの楽員たちを心服させ、その地位を揺るぎないものとしている秘密は何なのであろうか。それは彼の優れたオーケストラ統率力であり、巨匠的な風格である。オーケストラの体質のせいもあるが、彼の表現はいつもスマートで、その色彩は豊艶だ。あたかも絵の具をチューブから直接カンバスに塗りたくったかのように、そのひとつひとつの音は原色のような美しい輝きを持っている、“フィラデルフィア・サウンド”といわれる、あの独特なトーン・カラーである。
 来日を重ねるたびにオーマンディは、これまでどのオーケストラからも聴くことの出来なかったような華麗な音色と技術的な完璧さ、それに風圧を感じさせるような圧倒的な音量をもって作品を演奏し、我々を魅了した。このコンビはオーケストラの醍醐味を満喫させてくれる最右翼といってよかろう。かてて加えて、そのレパートリーの広さと作品をまとめ上げる腕前の確かさ。そうした特色は、このレコードの演奏からも充分にうかがい知ることができよう。
  オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団というと華やかさばかりが謳われる傾向がありますが、ドイツ系の音楽では、弦の豊かな響きを生かし、正攻法で包容力のある音楽で充実度の高い演奏をおこなっています。
 オーマンディの、この作品の録音は1945年のシゲティ盤や1959年のスターン盤がある。このフランチェスカッティ盤はSP録音とステレオ録音の間にある1956年、モノラル期の最終時期であり録音は申し分無い。1945年のシゲティ盤も名盤として名高いが、このフランチェスカッティ盤も素晴らしい。シゲティはもっとシャープなサウンドで歯切れが良く、フランチェスカッティの健康的な美音もまた印象的だ。オーマンディの伴奏もフランチェスカッティ盤ではソリストに刺激されたかのように美しい音で張り合っていて心地良いし、シゲティ盤よりはフランチェスカッティ盤の方が主体的と言えるかもしれない。ただこういうのは、その時の気分でどっちが良いと感じるかは誤差の範囲に感じる。作品の核心に肉薄する勢いではシゲティ盤の方が上回っており、そういう視点から聴くとフランチェスカッティ盤は楽天的に聴こえなくも無い。どちらも屈指の名盤と言えるだろう。
 この録音に聴くフィラデルフィア管弦楽団は、まだ後のようには油ぎったサウンドではない。やや肉付きが良くなったとはいえ、まだストコフスキー時代の特徴が色濃い。この後ステレオ期になっていくと急速にオーマンディのイニシアチブが感じられるようになるが、これは楽員の交代や録音方式の変化など様々な理由の為だろう。1970年代の円熟の“フィラデルフィア・サウンド”も素晴らしいし、1960年代の全盛を誇ったゴージャズなサウンドも良いのだが、未だストコフスキー時代のノーブルカラーが残る、この時代のオーケストラが一番好きだ。
 このヴァイオリン協奏曲は大変優れた演奏である。なんといってもフランチェスカッティの音色が美しい。それは艶やかでまるで上質なワインのようだ。この音色でもってフランチェスカッティは時に溜めてみたりドラマティックにこの作品を歌いぬく。フランチェスカッティのソロが強力なフィラデルフィア管弦楽団の総奏にも埋没することが無いのは決して録音のせいばかりではあるまい。
 ブラームスらしさに溢れる第2楽章。魅力的なアダージョである。ここでのフランチェスカッティのまるで消え入るような美しいヴィブラートには思わず引き込まれる。たゆとうようなヴァイオリン・ソロは幻想的な魅力を放ってやまない。クレーメルのような現代的な感性とはまるで別の世界だが、まだ近代化の津波に襲われる以前、人類がもっと素朴に暮らせていた頃の音楽としてはこちらの方がふさわしい。

通販レコードのご案内 音の曲線が光っているように感じられるほど、美しい。

US COLUMBIA ML5114 フランチェスカッティ&オーマンディ ブラームス・ヴァイオリン協奏曲《米6EYESグレイ盤》US COLUMBIA ML5114 フランチェスカッティ&オーマンディ ブラームス・ヴァイオリン協奏曲 ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリンは聴く者を幸福な気分にさせる。その音は豊潤で、艶やかで、屈託がない。深刻ぶったところもない。心地よさを伴いながら耳の中にすべりこみ、鼓膜に浸透し、全身に行き渡る。
 正直なところ、彼が遺した録音には、「この作品なら、この1枚さえあればいい」といいたくなるほど決定的なものは、ほとんどない。サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番や「序奏とロンド・カプリチオーソ」、ヴィターリのシャコンヌ、ラロのスペイン交響曲、ベートーヴェンの「クロイツェル」、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番など、ファンから絶賛されてきた録音はいくつかあるが、「無双の名盤」とはいい切れない。
 ただ、そのヴァイオリンには、彼にしか出せないベルカントのエキスがたっぷり含まれている。演奏、解釈の精神性やら、音楽の深淵に誘う濃厚さや深刻さとは一線を画した美音と名技が素晴らしい。バッハにしても、モーツァルトにしても、「もしパガニーニが弾いたら、こんな風になるかもしれない」と思わせる無色の気迫のようなものが、音楽の底を覆っている。

激しいパッセージでも聴く者を緊張させない。

 ラテン的に明るい演奏スタイル。と言うのが、これ。断定しても良い位に、『フランチェスカッティのヴァイオリンの音質は、慈しみ愛撫する人肌の感触を思わせる。高音域においてさえ潤いのあるヴィブラートがかかり豊かな情感を生みだすのだ。』 ー ジノ・フランチェスカッティはフランスのヴァイオリニストだが、パリ音楽院にはいかずパガニーニの孫弟子にあたる父親と、その父親の弟子だった母親の薫陶を受けて育った人だった。 ー ヴァイオリンが理想のソプラノを模した楽器であることを一聴理解させてくれる凄みを持つ。美には様々な相貌があるから、『燦然たる』とか「絢爛豪華な」という形容詞がどのくらいのイメージの助けになるかわからないけど、紛うところなく親しみやすく、美しい歌い口が魅力のヴァイオリニストである。もしかしたら演奏しているジノの脳裏には母親の姿が常にあったのでは無いかとさえ思えます。彼が使っていた古今の銘器『ハート』と名付けられた1727年製のストラディヴァリウスは現在、サルヴァトーレ・アッカルドの手許にあるがフランチェスカッティの音がしないからだ。
1956年録音

通販レコード詳細・コンディション、価格

プロダクト

Zino Francescatti, The Philadelphia Orchestra, Eugene Ormandy, Brahms ‎– Concerto In D Major For Violin And Orchestra, Op. 77 - Columbia Masterworks ‎– ML 5114
レコード番号
ML5114
作曲家
ヨハネス・ブラームス
演奏者
ジノ・フランチェスカッティ
オーケストラ
フィラデルフィア管弦楽団
指揮者
ユージン・オーマンディ
録音種別
MONO
6EYES WITH BLACK LETTERING, MONO 1枚組(160g)。
US COL ML5114 フランチェスカッティ&オーマンデ…
US COL ML5114 フランチェスカッティ&オーマンデ…

コンディション

ジャケット状態
EX
レコード状態
EX++
製盤国
US(アメリカ合衆国)盤
6EYES グレイ》12インチ盤が登場した初期(1950年頃~)は Masterworks シリーズとして、レコード番号の頭はML、1955年になると六ツ目が登場する。六ツ目とは左右3個ずつの黒地に白抜きの目玉のようなロゴがあるもの (6Eye) のことであり、「グルーヴガード盤」であり、ヴァリアブル・ピッチによるカッティングも為されており、LPの飛躍的な技術的向上を見ることが出来ます。六つ目は1962年まで続いている。

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オーダーは 品番 / 34-20480
販売価格 3,000円(税別)
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Posted by 武者がえし at 02:15│Comments(0)通販レコード協奏曲
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