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2020年08月25日

名曲名盤縁起 最初の2分だけで、天下無敵の名曲に…◉リヒャルト・シュトラウスの交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》

作曲もした哲学者ニーチェ没 ― 1900年8月25日

「超人思想」で全世界を風靡したドイツの哲学者・思想家、フリードリヒ・W・ニーチェ(1844〜1900)が、狂気のうちに他界した日である。クラシック・ファンには、リヒャルト・シュトラウスに超有名な交響詩を書かせるきっかけを作った人として記憶されてきた。曲名は《ツァラトゥストラはかく語りき》。
GB DEC SXL6379 ズービン・メータ R.シュトラウス・ツ… だが、超有名なのは「冒頭のわずか2分だけ」と断言したら、リヒャルト・シュトラウスのファンに叱られるだろうか。その2分間の音楽が、もしSF映画の傑作『2001年宇宙の旅』で、人類の祖先が動物の骨を空中に投げ上げる衝撃のシーンに使われなかったら ― ともあれ、この冒頭部分は壮大極まりない音楽だ。地鳴りのようなオルガンの重低音に導かれて、トランペットが吹奏する勇壮な主題に続いて、ティンパニの「ドンデンドンデン……」。最初が強烈過ぎて、残りの30分以上がどんな音楽だったのか、忘れてしまうかもしれない。


猿人に愛情が芽生えたのか、家族を襲うトラを叩き殺して食料を得る。何かの動物の骨を道具として使い、知恵を得た瞬間だ。と同時に権力 ― 主導権を誇示する時代を迎える。20世紀初頭に作曲された、《ツァラトゥストラはかく語りき》は映画製作時の現代音楽であったリゲティの「レクイエム」に受け継がれる。宇宙ステーションが月へ向かう場面でのヨハン・シュトラウス2世の円舞曲『美しく青きドナウ』は19世紀末に全ヨーロッパを風靡した優雅な舞曲。ディスカバリー号が木星に向かう途上でのアラム・ハチャトゥリアンのバレエ音楽『ガイーヌ』から「アダージョ」。ガイーヌは、地質学的な秘密を発見しようとしてソビエト軍の領地に密かに侵入しようとする不審者を捕らえる手伝いをしている人物。であるものの、また、スパイを捕らえることや、弱くて最初は圧力に抵抗できない人々の物語でもある。彼を主人公として描かれるのは、集団農業の人々の最終的な勝利の物語でもあり、人々は問題を克服し、立派に自分たちの共同体を作り出し、その後いつまでも幸せに暮らすのである。ボーマン船長は、その後どうなるのか。キューブリックは当初、自分の監督作品『スパルタカス』の音楽を手がけたアレックス・ノースに作曲を依頼し、前半部分まで完成したスコアの録音まで完了していた。しかしそれ以降は一切の連絡もないままノースの音楽を没にし、リヒャルト・シュトラウスなどの音楽に差し替えてしまう。出来上がった映画のラストは、最初のシナリオから変化したのかもしれない。これらのクラシック楽曲が今では名曲なのは、そのすべてがこの映画の賜だといえよう。この映画をきっかけに、リゲティや、ハチャトゥリアンを買い揃えた、わたしとしてはそう思えて仕方ない。ヨハン・シュトラウス2世の円舞曲『美しく青きドナウ』にしても、宇宙時代にぴったりだと感動している。

Richard Georg Strauss ― 「私が今まで長生きしていることは偶然に過ぎない… 私がいなくなっても、花は咲き続けるよ」

Richard Georg Strauss
(1864.6.11 〜 1949.9.8、ドイツ)
 ミュンヘンの宮廷楽団のホルン奏者を父として生まれた。はやくから音楽に親しみ、21歳でビューローのもとでマイニンゲンの宮廷音楽監督と成ったのを振り出しに、各地の指揮者を歴任した。22歳で最初の交響詩《ドン・ファン》を書き、マーラーに認められた。彼は交響詩に創作意欲を燃やし多数の力作を書いたが、彼の交響詩はリストのそれをさらに発展させたもので自由な構成と多彩なオーケストレーション、新しい技法を駆使した描写力の優れたものとなっている。代表作には、《死と浄化》、《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》、《ドン・キホーテ》、《英雄の生涯》等が有る。他には《アルプス交響曲》が有名。また歌劇にも力を注ぎ、《サロメ》や《バラの騎士》は傑作としてよく上演される。

ナチス・ドイツに内側から対抗した

 リヒャルト・シュトラウスは1864年、ミュンヘン宮廷歌劇場の第1ホルン奏者の息子として生まれた。父親による厳しい音楽教育を受けながらも、20歳になるまでにいくつかの作品を作曲する才能に恵まれた人物であった。1882年にミュンヘン大学に入学するが満足できず1883年ベルリンに移った。1885年からは指揮者としての活動もしており、ハンス・フォン・ビューローのもとで第2指揮者として学んだ彼は、指揮者としても有能で、ビューローの辞任後は彼が引き継ぐこととなった。
 また彼は戦後まで生きた作曲家であり、第2次大戦中にナチスに協力的な態度をとったとして戦後、軍事裁判を受けた。この裁判で無罪となった彼はその後はあまり公の場にも出ず、作曲活動もやめて穏やかに暮らした。表だった活動は控えていたが、周囲からのすすめもあり、ロンドン公演を実施している。シュトラウス本人は『アルプス交響曲』を希望したが、当日に別の演奏会があったためにオーケストラ奏者を確保できなかったために、このときの演目は『家庭交響曲』。なおこの時、ロンドンの行く先々で「あなたがあの『美しく青きドナウ』の作曲者ですか?」と、尋ねられたという逸話が残されている。イギリス人にとってもはやシュトラウスは“過去の人”であったが、自ら指揮棒を振り健在をアピールしている。シュトラウス自身も戦後すぐの放送インタビューで「私はもう過去の作曲家であり、私が今まで長生きしていることは偶然に過ぎない」と語った。
 晩年、ひっそりと暮らしていたシュトラウスは庭の花を観てよく「私がいなくなっても、花は咲き続けるよ」と呟いたという。シュトラウスは生涯を通じて数多くの歌曲を書いたが、すでにシュトックハウゼン、ブーレーズ、ノーノ、ケージといった前衛作曲家達が登場し始めていたこの時代においては、シュトラウスの作風は、あまりに古色蒼然とした時代遅れであった。にも関わらず、この歌曲集『4つの最後の歌』は聴衆からも演奏家からも常に高い人気を誇っている。シュトラウスの最後の作品は歌曲「あおい」であった。
 シュトラウスは1949年9月8日、ドイツのガルミッシュ=パルテンキルヒェンで死去した。遺言により、葬儀では『ばらの騎士』第3幕の三重唱が演奏された。他の作品においても、同時代における時代遅れ感は年数が経過するごとに見えにくくなることもあり、彼の言葉通り、リヒャルト・シュトラウスが種を蒔いた花々は、忘れ去られるどころか今なお20世紀の作曲家としては最も演奏機会の多い一人となっている。創作の面では指揮者として活動し始めた頃は古典的な作風であったが、徐々にワーグナーやリストに影響を受け、多くの交響詩やオペラを作曲した。特にオペラではモーツァルト、ワーグナーと並ぶ高い評価を得ている。




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