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熊本市内のクラスターは「夜の店」が大半 ― 店名公表に協力したことをPRにもなる

熊本市中央区のキャバクラと会員制のラウンジで、新型コロナウイルスのクラスター（感染者集団）が相次いで発生した。ともに繁華街にある接待を伴う業態だが、熊本市の店名公表の判断が「顧客リストで感染者を追跡できるかどうか」で分かれた。
政府は７月、クラスターが発生し、感染経路の追跡が困難な場合には、店側の同意なしでも公表できると自治体に通知した。
熊本市は10月4日、従業員らの感染を多数確認した下通のキャバクラの店名を発表した。１日当たりの来客は100人程度で、不特定多数の客が出入りする。店が利用客を把握しきれておらず、自ら名乗り出てもらうために公表を決めた。13日現在、44人（従業員23人、利用客21人）の陽性が判明。報道で店名を知って検査を申し出た客も少なくなく、市は「店名公表が感染抑止に一定の役割を果たした」とみる。
熊本市内のクラスターは「夜の店」が大半。市は５例目のこのキャバクラまで店名を明らかにしたが、10日にクラスターの発生を発表したラウンジは「会員制の店。顧客リストで連絡を取ることができる」として店名公表を控えた。県全体では、県が公表した造船会社の事業所、介護老人保健施設も含めて計８例のクラスターが発生したが、名前を伏せた初のケースだ。

感染抑止と店の経営にダメージを与えるリスクとの間での悩み ― 公表した店についても営業再開を後押しする

熊本市の場合、公表に際して「店の同意」を得るよう努めている。
公表は感染抑止に必要な手段である半面、店の経営にダメージを与えるリスクもある。行政側も悩ましげだ。感染症法は、国や都道府県などに対し、個人情報保護に留意した上で、感染予防に必要な情報を積極的に公表しなければならないと定める。
高本佳代子保健衛生部長は「感染抑止のためには同意なしの公表もあり得る。ただ、店名公表を前面に出しすぎると、陽性者が本当の行動履歴を隠し、検査を避ける事態も想定される」と状況の複雑さを口にする。だが、クラスターの店名を非公表にすれば、関係ない店まで「あそこの店では」と勘繰られてしまう。大西一史市長は「あらぬ風評被害を避けるためにも店名公表が原則」と強調。
公表した店についても「感染症の被害者で、周囲から誹謗(ひぼう)中傷を受ける立場ではない」と指摘し、感染抑止のため、店名公表に協力したことをPRするなどして、営業再開を後押しする考えだ。