アナログレコードの魅力✪昭和の名盤レコードコンサートでご体験ください

室内管弦楽の演奏で「上品で知的」と評判なのが、音楽学者でもある指揮者、ジャン＝フランソワ・パイヤールが率いるパイヤール室内管弦楽団である。そのアンサンブルは、繊細なうえに明るさがあり、古典的で格調高い世界を表現している。
　バッハのチェンバロ協奏曲は聖トーマス教会のカントルに就任するはるか以前、ライプツィヒのコレギウム・ムジクムでの演奏会のために旧作や、他の作曲家の作品をチェンバロで演奏できるように仕立て直した曲集。
　バッハがコレギウム・ムジクムの仕事を始めた頃、長男のヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ、次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハを始めとする息子たちや、弟子のヨハン・ルートヴィヒ・クレープスらが一流のチェンバロ奏者に成長しており、このことが複数のチェンバロのための協奏曲の成立の背景にあると考えられる。彼らが作曲をする上で、演奏法の違いを学ぶためには良い教材だったでしょう。他の作曲家の作品ではヴィヴァルディがよくわかるが、原曲通りではなくヴィヴァルディの複数の曲から自由に採用している。そうした点では原曲を特定しにくくもした。
　このレコードでは、チェンバロ協奏曲 第７番 BWV 1058 から、第３番 BWV 1054 の順番で並んでるが、原曲がヴァイオリン協奏曲の第１番と第２番だからだろう。チェンバロ協奏曲 第１番 BWV 1052 も消失したヴァイオリン協奏曲が原曲と思われるが、バッハの音楽としてはチェンバロパートがブリリアントで他の作曲家の作品だと思われている。しかし、チェンバロ協奏曲集の中で最も完成度が高くて魅力が有る。
　バッハはさらに、この曲から第１楽章、第２楽章はカンタータ第146番『われら多くの苦難を経て』に、第３楽章はカンタータ第188番『われはわが信頼を』の序曲に転用されている。編曲作品であることを念頭に聴くことや、原曲と云われるヴァイオリン協奏曲と比べて聴いたり、他の作曲家の作品を聞いて原曲を見つけ出すのも楽しいだろう。