「クラシック音楽専科ガイド」
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2020年07月11日

詩曲は、神秘と幻想の中に「愛の青い炎」と「死の静寂」が混沌としている曲です〜クラシック名曲ガイド、これを聞け

ショーソン作曲 詩曲 作品25

1896年作。名手イザイに献呈された文字通りのポエムで、神秘的な序奏のあと、瞑想的な主題と情熱的な主題が詩心をもって展開される。
 はじめ法律を学び、25歳で音楽に転向したショーソン(1855〜1899)は、交通事故のために44歳という若さで急逝してしまったために、その作品の数は必ずしも多くはない。この「詩曲」は、そうしたショーソンの作品の中で最も広く親しまれている名作で、1896年にイザイによって初演され、このベルギーの名ヴァイオリニストに捧げられた。
 曲はゆっくりとした神秘的な序奏に始まり、ヴァイオリンが瞑想的な美しい第1主題を弱奏で歌う。そして、対象的に強く情熱的な第2主題は、全合奏をバックにしたヴァイオリンの最強奏で示され、この2つの主題を中心に詩的で流麗な音楽が展開されてゆく。

《詩曲》は、ショーソンの最も優れた幾つもの長所を含んでいる。そこでは自由な形式が、調和のとれた構成と少しも矛盾していない。音楽が、あらゆる描写、あらゆる挿話に関係なく、この音楽の情緒を作り出している感情そのものとなる、最後の夢見るような優しさほど感動的なものはない。こうしたことは、一人の芸術家の作品のうちで滅多にない瞬間である。

 これは辛口批評で知られるドビュッシーの感想だ。文章の中にある通り、《詩曲》というタイトルには、挿話が潜んでいる。ショーソンの自筆譜に、“ Le Chant de l'Amour Triomphant ”とあるのはツルゲーネフの『恋の凱歌 Le Chant de l'Amour Triomphant 』との関連を切り離せない。そして、ショーソンの死の直後に行われたイザイの演奏会を伝えるレビューの中でも触れられている。

 イザイが、その理想的な演奏者である、この見事な作品の詩的な起源は、ロシアの作家の作品にあるように思われる。読んだ時の印象が、彼の音楽家としての敏感な魂の奥底まで揺り動かし、《詩曲》の第1主題の開花となった。

 ヴァイオリン弾きの青年が恋をした。しかし、美しい少女は美形の青年と結婚します。失望したヴァイオリン弾きは東方に旅立ちます。幸せな結婚生活は続いていましたが、いつまでも子供が授かりませんでした。
 そんな或る美しい夏の夕、ヴァイオリン弾きの青年が帰郷する。東南アジアから持ち帰った神秘的で珍奇な品々、お伽噺のような遍歴譚、そして彼が奏でる情火と歓喜に燃え輝く旋律。ヴァイオリンの弓の先には尖った宝石が輝いていた。
 その夜、異常な夢を見た人妻は、と或る美しい秋の日、彼女は結婚後はじめて、新しく芽生えた生命の鼓動を感じるのでした。


《詩曲》は、神秘と幻想の中に「愛の青い炎」と「死の静寂」が混沌としている曲です。

 ショーソンにとって《詩曲》は特別なものだが、ヴァイオリン弾きにとって『ショーソンの詩曲』は特別である。ツルゲーネフの『恋の凱歌』をなぞりながら、《詩曲》を聴いてみると、それまで曲を聴いていて抱いていたもやもやが晴れる思いがするし、そこからさらに先のイメージが湧き出してくる。

 挿話は楽想の発露になったのは確かだろうし、楽曲の構成を理解する助けになるのも確かだが、ヤッシャ・ハイフェッツの演奏からはショーソンが楽譜に書いた音符以外のものは聴くことはない。徹底して楽譜が望むヴァイオリンの音色が、挿話に関係なく、過多な夢見心地も廃されてヴァイオリンが最も美しく響く調性を活かしている。ロシア音楽の流れをくむドビュッシーが最も賞賛しそうな演奏ではないか。

詩曲は、神秘と幻想の中に「愛の青い炎」と「死の静寂」が混沌としている曲です〜クラシック名曲ガイド、これを聞け

Amédée-Ernest Chausson

フランスの音楽の振興に努め、交響曲、室内楽、歌曲、歌劇など幅広い分野を手がけドビュッシーやラヴェルに道を付けた。

(1855.1.201899. 〜 6.10、フランス)

Ernest Chausson 最初法律を学んだが、21歳でパリ音楽院に入学。作曲をマスネーに、オルガンをフランクにそれぞれ学んだ。ダンディとともにフランクに深く傾倒し、強い影響を受けた。師フランクとサン=サーンスが設立した「国民音楽協会」の書記を務め、史上初の自動車事故によって、44歳で惜しくもこの世を去った。彼の作風は、フランクの影響を受けたとはいえ、ワーグナーからの影響も少なからず認められ、抒情的で溢れるばかりの甘美で詩的な旋律の美しさが特色となっており、歌曲と室内楽曲に本領を発揮した。

 代表作としては、ヴァイオリンと管楽器のための「詩曲」や歌曲「リラの花咲くとき」、「交響曲変ロ短調」などが最も有名であり、またこれらの曲に彼の特性がよくあらわれている。
 ショーソンは19世紀後半にドビュッシーやラヴェルの印象主義の前提となる独自のフランス的音楽を完成した作曲家である。ショーソンは、はじめ法律を学んで弁護士になったが、後に音楽の道を選び、1880年にパリ音楽院に入学し、最初にマスネ、続いてセザール・フランクに師事した。その後、ショーソンは1871年に組織されたフランクが会長を務めるフランスの"国民音楽協会"で10年間、その書記をするなど実務にたずさわり、フランスの音楽の振興に努めた。ショーソンは器楽曲、オペラ、声楽曲、ピアノ曲、宗教曲の作品を残しているが、そのうち最も有名なのは1896年作曲のヴァイオリンとオーケストラのための「詩曲(ポエム) Op.25」である。ショーソンの音楽はバランスがよく、落ち着いており、フランクやワーグナーの強い影響を受けたといわれるが、繊細でフランス的な旋律やハーモニーは独自の詩情に満ちた境地を造っている。ピアノ曲は数少なく、「5つの幻想曲 Op.1」、「いくつかの舞曲 Op.26」(96年)、「風景 Op.38](95年)がある。ショーソンは自転車で散策中、事故に遭い他界した。

ハイフェッツの出現は、国籍なき最終進化型の偉大なる予告だった

GB EMI BLP1072 ハイフェッツ&ソロモン ショー… 数多くのレコードは、古典派の名曲から近現代のショーピースまで及び、完璧な技巧はハイフェッツが活躍した時代を共有した人々を驚かせ、感嘆させた。ピアノなどと違って自分で音程も音色も作らなければならなら、この扱いにくいヴァイオリンの演奏精度を、これまた極限まで高めた音楽家として20世紀の大ヴァイオリニストとしてクライスラー、ハイフェッツ、シゲティのベスト3は揺るがない。
 コンクール制度によって技術的水準が天井知らずに上がってゆく現代でも、現今のすべてのヴァイオリニストにとってハイフェッツは神様のような存在だが、演奏史上の格付けに「最高」の評価を与えない評論家、愛好家は今以って少なくない。SPレコード時代、「あれは音楽ではない。機械だ」といわれた。精神主義華やかりし、フルトヴェングラーやトスカニーニが君臨した「音楽が人々にとって偉大であった時代」。作品の背景や、解釈から、いきなりスパっと割り切れた名人技を示されたのだから、人々が戸惑ったのも無理からぬ処であろう。ハイフェッツのテクニックは完璧であり、音色の輝かしさは他の追随を許さず、しかも、好不調の波も僅かで、いかなるときも破綻を来たすことはなかった。録音から窺う限り、ハイフェッツの演奏スタイルは生涯変わらなかった。クライスラーは約四半世紀後輩のアメリカ・デビュー盤を聴いたあとで一言、「私達ヴァイオリニストは、全員膝で楽器のネックをへし折って転職しなければならない」と語った。もちろん年齢の加算による覇気の深まりは増すが、16歳の初録音から、「ラスト・コンサート」と名付けられた1972年、71歳のライヴ・レコーディングに至るまで、スタイルに変化がないだけではなく、解釈と内容も変わっていない。進歩していないのではない、20歳未満にして彼の芸術は完成されていたのである。

ミルシテインをオイストラフと比べることはできよう。グリュミオーはコーガンと、フランチェスカッティはスターンと。しかしハイフェッツに関しては、あらゆる比較が不可能なのである。

ハイフェッツ演奏の無国籍性

 ハイフェッツの演奏は『グローバル化』された音。ロシア生まれだから、チャイコフスキーが素晴らしい、と単純に言えない。ショーソンやサン=サーンスにフランスのエスプリは聴けない。『ハイフェッツ』そのものを聴かされることで終始する。いかなる国や地方の文化や歴史からも断絶された『世界統一新規格』になっている。バッハやベートーヴェンにドイツの質実剛健はなく、さらに、バッハとブラームスの様式の差別化もない。
 あまりにうますぎ、ベートーヴェンがパガニーニの技巧曲のように聴こえる場面が出てくるが、他の誰よりも速いテンポで健康的に一気呵成に進めつつ、抜群のニュアンスを堪能させてくれる。それが即ち、バッハ=ベートーヴェン=ブラームスと繋がる、ドイツ主流派の音楽では決定的名演と推し難いところだ。しかし、いま聴いてみると、あまりにうますぎただけで、すっとした流れの中になんともいえぬ表情がつき、節回しなどは十二分に個性的だと思う。




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